KANEYANの秋田ぶらり旅

KANEYANが秋田県内の各駅を回りながら綴るNONSTOP AKITA DIARY

#3 【熊出没注意】【JR花輪線】「晩夏の花輪線徒歩の旅で出会った恐怖の神社と至福のお寿司屋さん」とは?

■熊の聖地・鹿角市を行く

熊対策には鈴が有効なのか。

 

花輪線沿線を歩くにあたり、スマホで熊対策グッズを調べてみる。だけど俺は今までの人生で一度も鈴を買ったことがない。そもそも鈴はどこに売っているのだろうか。そもそも鈴を用意したところで豪傑な熊相手に立ち向かえるのだろうか。そもそも熊は俺よりも俊敏だろうから俺がバッグから鈴を探している間に襲い掛かられてしまうのではないだろうか。そもそもそんなに熊が怖いのなら熊が出そうなところには立ち寄らなければいいだけの話ではないだろうか。スマホで熊対策グッズを調べながら、自問自答を重ねる夏の終わりである。

 

前回の記事で紹介した大滝温泉駅をさらに岩手方面へ進んでいくと大館市を抜けて鹿角市に足を踏み入れることになるのだが、鹿角市といえば、もはや熊である。つい先日も自転車に乗った高校生が熊に襲われるという事件が起きたばかりの秋田県屈指の熊登場スポットである。

そんな危険地帯に「熊に出会ったら後ろ向きで逃げるとよい」というもはや都市伝説に近い情報のみをインプットして俺は大滝温泉駅の次の駅である「十二所駅」へと降り立った。

 

十二所駅からは比較的次の駅までの距離が短く、先日までの猛暑もひと段落したことから、今回は花輪線沿いを徒歩で旅する計画を算段した。もちろんこの計画については後に大きな後悔をする羽目になることは言うまでもないのだが、勇者KANEYANにおいては、ひとまずは大志を胸に目的地である4駅先の「十和田南駅」を目指し十二所駅を出発したのである。

 

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住宅街を進んでいくと、パンの製造工場のような建物が見え、そこで製造されたパンを購入できる自販機を発見した。この先十和田南駅までおそらく飲食店はないはずだ。ここでパンを食べられるのはありがたい。幸先の良いスタートである。

 

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■プチ登山の三哲神社と老犬シロを祀った老犬神社とは?

自販機でピザパンを購入し、次の「沢尻駅」を目指し歩を進めていると前回のブログで紹介した「湯夢湯夢の湯」の看板が所在なさげに林に埋もれているのを発見した。そしてその先には「三哲神社登り口」という看板がこちらも幾分居心地悪そうに立っている。

 

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どうやらその三哲神社まで、1.2キロということである。もしこれが2キロも3キロもあれば完全にスルーするところではあるが1.2キロであれば歩けないこともない。

俺は勢い勇んで三哲神社を目指し歩き始めたのだが、もはや歩くよりも登るといったほうが正しい形容であった。プチ登山である。しかもここは高尾山ではない。他に観光客などいるはずもなく、ここで出会うとしたら腹を空かせた熊である。運が悪いことに俺はさっき買ったばかりのピザパンを所有している。飢えた熊の親子が俺のパンを狙って現れる可能性がある。マジかよ。どうすんのさ。もし熊に見つかったら後ろ向きで逃げるか。ネットに書いてあったし。いやいや後ろ向きで逃げたりしたら、誤って崖から転落して死んでしまう。熊の恐怖を感じながら山を登る。これは新たなパターンの肝試しである。大げさではなく人生で最も怖い1.2キロの道であった。

 

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途中、三哲山頂上まで2.4キロという案内看板は見なかったことにして、三哲神社に形だけ立ち寄り「どうかこの後も熊に出会いませんように」と神様に懇願し、神社の隣に設置されていたトイレで用を足した。これではただ単に苦労しておしっこをしに来ただけである。

 

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命からがら三哲神社を後にし、 本日二つ目の駅「沢尻駅」にたどり着いたのは正午前。さっき買ったピザパンでも食べながらすこし休憩でもするかと駅の待合室に入ろうとしたら、どうやら沢尻駅における観光スポットらしい老犬神社までの道のり案内がデカデカと貼られている。

 

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神社はもはやこりごりなのである。しかも徒歩30分。30分歩いても老犬シロが祭られているというその神社まで行きたいかと言われれば沢尻エリカでなくとも「……別に」である。だがこの先十和田南駅までの道のりで紹介できるスポットを見つける自信がないのもまた事実である。俺は重い腰を上げて、老犬神社に向かうことにした。

 

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もはやどっちに行けばいいんだよという、突っ込みをする気力すら失せる寂れた看板を超えて、老犬神社の入り口までたどり着きまたもや愕然とした。老犬神社に行くには急勾配なオフロードを登らなければならないのだ。どうしてそんな高いところで供養しなければならないのか。もはや忠犬シロに軽い殺意を持ちながらも俺は老犬神社を目指した。

 

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神社に着いた頃には案の定運動不足の足腰は悲鳴を上げていたため、忠犬シロの参拝もほどほどに神社の隣に設置されていたトイレで用を足してその場を後にした。俺はもはやおしっこする場所を探しながら歩いているだけなのかもしれない。

■晩夏の花輪線徒歩の旅

老犬神社を後にし、次の駅「土深井駅」に向けて歩いていると「鹿角市」の看板が多少よろけながら立っていた。ハチ公だの、シロだの、とにかく犬推しが熱かった大舘市を抜けてついに鹿角市に突入である。

 

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言うまでもないが、この頃には疲労困憊で早く目的地の十和田南駅に着いて、冷えたビールをがぶ飲みしたいと、その一心である。ひとり24時間テレビのチャリティマラソンをしているような様相で心の中でZARD「負けないで」を奏でながら、土深井駅を早々に退散し、次の「末広駅」へと向かった。なぜかその道のりにはお墓が多かった。道端のお墓を眺めながら晩夏の花輪線徒歩の旅はフィナーレのサライの合唱に向けてどうやら一応進んでいるようである。

 

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本日4駅目の末広駅も無人駅である。所狭しと貼られた地元末広小学校の校報を眺めながら今まで歩いてきた道のりを振り返ってみた俺は、まさしく苦虫を嚙み潰したような様相を呈していたに違いない。純粋無垢な末広小学校の子供たちはこんな俺を見てどんな顔をするのだろうか。

 

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そそくさと末広駅を後にし、向かうは本日の目的地となる「十和田南駅」である。道中、今にも林の向こうから熊が飛び出してくるのではないかという恐怖に怯えながら、たどり着いた十和田南駅は僅かながらも人の気配があり、今日一番の「都会の駅」であった。

 

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 ■十和田南駅の寿司屋で至福のひとときとは?

考えてみたら、今日は最初に購入したピザパンしか食べていない。成人男性の1日の摂取カロリーとしては明らかに物足りない。さらにはこちとら熊の恐怖に身を凍らせながらここまで歩いてきたのである。ここはひとつ奮発して少しばかり旨いものを食っても罰は当たらないはずだ。いや、それにしても今日はよく歩いた。俺は万感の思いでひとり24時間テレビのフィナーレを飾るべく、十和田南駅から少し歩いた先にある寿司屋へと入った。

 

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まだ時間が少し早いせいか、俺が一番乗りであった。さっそくカウンターの隅に座りビールをオーダーして宴のスタートである。

 

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もはや文章で説明書きを加えるよりも写真だけで俺がいかに至福の時を過ごしていたのかが伝わるのではないだろうか。

前回のブログで俺は食へのこだわりがなく云々といった類のことを書いた気がするが、旨いものを食べて幸せだと感じる心はどうやら持ち合わせているようである。

 

「今日はどちらから?」

 

カウンターの端っこでカシャカシャと料理の写真を撮りつつ、黙々と酒を飲んでいる俺に同い年ぐらいの店主が話しかけてくれた。そう、俺は大人なのに人見知りなのである。知らない人には自分から話しかけられない質なのだ。

 

秋田市から。遠くからすみません……」

 

先日大館市の飲食店で「市外の方お断り」という看板を目にしていたことを思い出したのである。

 

「いえいえ、遠くからありがとうございます」

「あっ、はい。どうも……」

 

俺は大人なのに会話がきちんとできないのである。

だがそれでもこの数秒の会話でなんとなく打ち解けた気持ちになるのが、コミュ障の特徴である。俺はまた幾ばくか気分がよくなり、それまで飲んでいた緑茶割から日本酒に変えることにした。秋田県内屈指の名酒にして、秋田が誇る日本酒ゴレンジャー「NEXT5」の一角「一白水成」である。

 

「よかったらこれもどうぞ。地元の短角牛の炙りです。わざわざ秋田市から来ていただいたお礼です」

「ま、マジっすか」

コミュ障は人一倍サプライズに弱いものである。

 

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短角牛と店主の心配りを肴にさらに酒が進んだことは言うまでもない。よく食べ、よく飲み、最後はおススメの釜めしでフィニッシュ。居心地のよい店で、旨い料理を肴に酒を飲み酔っぱらう。これこそが独身で子供のいないアラフォーの俺に唯一残された生きる楽しみなのかもしれない、とさえ思った。

 

さて、今回は徒歩でお送りした俺の知らない秋田を探す旅。旨い肴と旨い酒ですっかり良い気分になったところでこの居心地の良いお寿司屋さんに別れを告げて、次回は花輪線の中枢「鹿角花輪」まで進んでみようか。

 

続く。