KANEYANの秋田ぶらり旅

KANEYANが秋田県内の各駅を回りながら綴るNONSTOP AKITA DIARY

#5 【チャリ旅】【JR花輪線】「鹿角花輪から秋田最東端の湯瀬温泉駅を目指すレンタサイクルの旅」とは?

鹿角花輪から湯瀬温泉を目指すレンタサイクルの旅

秋田の夏は短い。

 

すっかり肌寒くなった9月下旬の朝、俺は鹿角花輪駅から徒歩10分ほどの道の駅かづの「あんとらあ」にいた。

 

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ここから秋田最東端の駅「湯瀬温泉駅」を目指すにあたり、さすがに徒歩では心許ない。だがここ道の駅かづの「あんとらあ」では自転車を無料で貸し出してくれるサービスを行っているという。鹿角花輪駅から目的地の湯瀬温泉駅までは約10キロ。そう、結構な距離である。しかし自転車さえあれば行けない距離ではない。俺はさっそく受付のお姉さんからカギを受け取り、自転車に乗り込んだ。

 

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36歳の中年男が乗るには少々恥ずかしいルックスである。

しかし贅沢は言っていられない。10キロの道のりを歩くのと自転車を使うのとでは大きな違いがある。だったら電車で行けばいいやんという突っ込みも聞こえてきそうだが、田舎の電車時間の間隔を見くびってはいけない。さらに言えばこれは男の戦いでもあるのだ。もちろん戦っているのは己自身だ。これは30代半ばのくたびれた中年男性のチャリンコ奮闘記なのである。

 

とはいえ腹が減っていては自転車を漕ぐ気力も沸かない。まずは駅近くの喫茶店で腹ごしらえといこう。実は前日街を探索した際、洒落た喫茶店を発見していたのである。まだ少し早い時間だったが開店していた。何も急ぐことはない。俺にはチャリがあるのだ。ここでゆっくりコーヒーでも飲みながら、今日の旅のプランを整理するのも悪くはない。

 

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店内に入りメニューを広げてみると、美味しそうなものが揃っている。パスタにカレー、地元のお肉を作ったポークライスなんてのもある。だが現在の時刻は10時前。ランチはすべて11時からと書かれている。どうやら来るのが早すぎたようだ。俺はランチタイムの美味そうな写真を肴にチビチビとコーヒーをすするしかなかった。店内では店主と年配の女性のお客さんが前日逮捕された元TOKIO山口メンバーの話題で盛り上がっている。ここ遠く秋田でも山口メンバー知名度は絶大である。

■意外に過酷なチャリンコの旅

コーヒーを飲み干すと、俺は再び自転車にまたがりまずは次の陸中大里駅を目指した。

 

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昼近くになると気温も上がり、程よく汗もかいてくる。そしてさすがに自転車は早い。わずか20分ほどで陸中大里駅に到着した。

 

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陸中大里駅は道路の脇に隠れるようにひっそりと作られており、ちょうど花輪線が到着したタイミングではあったが、降車する人は誰もいなかった。

 

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気を取り直して次は八幡平駅に向かうというところであるが、ここから少しずつ状況が変わってくる。急な上り坂と下り坂が俺のかよわい足腰を執拗に攻めてくる。とにかくアップダウンの激しい道を前面にチャーミングなイラストを掲げたレンタル自転車で、時には立ち漕ぎし、時にはブレーキいっぱい握りしめて、ゆっくりゆっくり下ってく。……って、ゆずの歌じゃないんだから。普段から運動など一切せず酒ばかり飲んでいる40代間近のオジサンはすでに疲労の色を隠しきれず、もはや上り坂では漕ぐのを諦め、自転車を押しながらトボトボと歩いた。人生こんなはずではと思う瞬間がいくつかあるが、まさにこの時もその思いであった。しかし今さら引き返すわけにも行かない。俺は気合を入れて、自転車を押しながら歩いた。

 

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途中、スクールゾーンと書かれた看板を発見した。鹿角市の子供たちはこの鬼のような道を使って毎日学校に通っているのだろうか、などとふと思ってみたが子供たちの姿は全く見えない。むしろ人の姿が見えないのである。たまに通る車がフラフラしながら自転車を漕いでいる俺を怪訝な顔をして追い越していくのみである。

 

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昼頃、八幡平駅に到着した。大舘駅を出発した花輪線の旅もいよいよクライマックスである。

 

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先日、大滝温泉駅で酒どころか飯にもありつけなかった反省を生かし、湯瀬温泉では何も食えないものと考え今回は八幡平駅のすぐ近くにあった食堂で昼飯を食べることにした。

 

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すっかり夏はどこかに逃げてしまったが、自転車を漕いできた俺の体は十分に温まっている。ここは八幡平ポークとビールで間もなくフィナーレを迎えるこの花輪線の旅を祝いたいところだ。だが酒を飲んで自転車を漕ぐのは違法だということを常識知らずの俺も一応知っている。何よりここから湯瀬温泉までの道のりはさらに急勾配な心臓破りの道が待っている可能性がある。途中で気持ち悪くなって道の駅のお姉さんに借りた自転車をゲロまみれにするわけにはいかない。いや最悪ゲロまみれにするぐらいならきちんと洗って死ぬほど謝れば許してくれるだろうが、酔った勢いでガードレールのない崖から転落して死んでしまったら洒落にならない。大仙市に住む家族も遠く離れた鹿角市でまさか俺が酔っぱらってチャリで崖から落下するなど夢にも思っていないだろう。今回ばかりは酒をあきらめるしかなさそうだ。

俺はひとまずカレーを食べながら、この花輪線の旅の終着駅である湯瀬温泉を目指すことにした。

 

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■秋田最東端の地・湯瀬温泉駅とは?

だがここからが湯瀬温泉までの過酷な道のりの本番であった。容赦なく攻めてくる急な上り坂。もはや自転車を漕ぐ気力も失い、再び自転車を押しながら山を登る。なぜか天気予報は晴れだったにも関わらず小雨まで降ってきた。これが本降りになった日にはいよいよ終わりである。鹿角市を敵に回してでも、この自転車を投げ捨てヒッチハイクするしかない。当初、秋の景色を堪能しながら自転車で快適に温泉郷を目指すなどというプランをぶち立てた自分に怒りすら感じるのであった。

 

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途中、ラブホテルと思われる看板が山道の片隅に埋もれていた。

 

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看板のみで建物は見当たらない。かつては鹿角市民たちの秘密の場所としてこの山奥のラブホテルが機能していたのだろうか。

 

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気を取り直して再び山道を行く。ようやく温泉郷の雰囲気が漂ってきた。

 

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そしてついに本日の目的地であり、秋田最東端のJR花輪線湯瀬温泉駅にたどり着いた。

 

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初めて足を踏み入れた秋田最東端の地はやけに静かであった。よく言えば厳粛な、悪く言えば街がやけに暗く活気がない。この日の曇り空と相まって、街が沈んだ顔をしているように見える。大滝温泉の退廃ぶりにも度肝を抜かれたが、ここ湯瀬温泉もなかなかパンチの効いた雰囲気である。

 

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駅前の湯瀬温泉案内図を見てみると、この令和の時代にばっちりと個人名が並んでいる。まるで昭和の時代から時が止まっているようである。

 

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またしてもディスっているような流れになってしまったが、兎にも角にもせっかく必死にチャリを漕ぎ秋田の最東端の地まで来たのである。この疲れたネクスト中年世代の体を温泉で癒し旅のフィナーレといきたい。俺は駅近くの「姫の湯」に向かった。

 

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館内も山奥の温泉宿特有の静けさがあった。大滝温泉駅で利用した「湯夢湯夢の湯」と比べるとローカルな雰囲気がなく、フロントのお兄さんもまるで訛っていない。コロナの影響か、それとも平時でもこんなものなのか他のお客さんの姿は見当たらず、温泉は貸し切り状態だった。

誰もいなかったので露天風呂の写真を撮り、フロントのお兄さんにブログに載せてよいか確認したところ「東京の本社に確認してほしい」とのことだった。これについては何も言うことはないが、ただこの秋田の最東端の小さな温泉街にまで東京の手あかがついていると思うと少しだけ寂しくなった。

 

俺にもやはり秋田県民の血が流れているのだろうか。

 

さて唐突に大舘駅を出発して始まったKANEYANの秋田ぶらり旅。この後鹿角花輪駅まで再び自転車を返しに行かねばならぬことをすっかり忘れたことにしている俺だが、ここ秋田最東端の地にて、ひとまず花輪線に別れを告げて、次は能代駅から五能線の旅に出てみようか。

 

続く。