KANEYANの秋田ぶらり旅

KANEYANが秋田県内の各駅を回りながら綴るNONSTOP AKITA DIARY

#17 【町飲み】【JR羽越本線】「極上の酒とDEEPな出会いを求めて彷徨う秋田駅から羽後牛島駅へのはしご酒の旅」とは?

秋田駅から羽後牛島駅へのはしご酒の旅

また飲み過ぎた。

 

20代の頃はどんなにひどい二日酔いに遭遇しようとも夕方にはケロっとしてまた酒場に向かったものだが、先日37歳の誕生日を迎えすっかり中年の域に達した今は昼を超え夕方を超え夜になっても具合が悪い。

今日はほどほどにしよう。二日酔いが怖い俺はそう自分に言い聞かせ酒を飲み始めるのだが、気づけば泥酔している。こんな失敗を俺は何十回、いや何百回と繰り返してきた。それでも俺は酒が好きなのである。そしてさらに言うと酒を取り囲む人々についてもまた好きなのである。

 

完全に酒飲みの言い訳である。

 

それはさておき、秋田は大雪に見舞われた。

ごっそり降り積もった雪に家の玄関をふさがれ、車の運転で神経をすり減らし、日々の雪かきで腰を痛める。

 

ぜんぶ雪のせいだ。

 

それでもここ数日の晴天により、わずかではあるが秋田にも春に向かう兆しが見えてきた。秋田県民の皆さん、お疲れ様です。ここはひとつ一刻も早い春の訪れを願い秋田の酒場で乾杯しようじゃないか。

 

完全に酒飲みの言い訳である。

 

冒頭にも書いたように俺はまた飲み過ぎたのであるが、その反省を抱えつつここからは先日敢行した秋田駅から羽後牛島駅へのはしご酒の旅の一部始終を記していきたいと思う。まずは先日までの大雪からようやく解放された秋田駅からスタートである。

 

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■秋田の日本酒の聖地「永楽食堂」とは?

まず一件目に訪れたのは秋田駅から徒歩5分ほどのところにある「永楽食堂」である。

 

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店内に入るとその活気に驚かされた。まだ夕方5時過ぎにも関わらず店内はほぼ満席で秋田の呑兵衛たちが幸せそうに酒を酌み交わしている。

そこにはコロナ禍における荒んだ空気は微塵も感じない。秋田の酒場も捨てたもんじゃないな。根っからの酒場好きの畜生はひとりで納得しつつ、また同時にお通しの湯豆腐と肉しゃぶをつまみつつ、さてどの酒を頼もうかと周りを見渡す。とにかく酒の種類が豊富である。

 

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俺は秋田屈指の酒蔵である新政の「NO.6」の飲み比べ3種セットを注文した。「NO.6」はグレード別に「R-type」「S-type」「X-type」とに分かれているのだが店員のお姉さんが目の前にボトルを順番に並べてくれた。この心遣いが嬉しい。目の前に鮮やかなラベルが並ぶ。その凛とした姿は秋田の日本酒界の「横綱」である。

 

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「NO.6」を飲んでいく。ちなみに俺は酒の味を言葉で表現するのが苦手だが果たしてどうだろうか。とにかく飲みやすい。いかにもありふれた陳腐な表現である。とにかく上品だ。これもどこかで聞いた。X-typeは芸能人で言ったら叶姉妹(お姉さん)である。もはや意味がわからない。俺は右往左往しながら、あっという間に3種のNo.6を飲み干した。

 

ちなみに俺はS-typeが好みである。X-typeほどのゴージャスさはないものの、適度な甘さと酸味が心地よい。何より味に品があり飲み飽きしない。そう、S-typeは芸能人で言ったら叶姉妹(美香さん)である。

 

俺はS-typeをもっきりで注文し、肴は鯵のなめろうを合わせた。

 

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さて酒も肴も申し分ない「永楽食堂」だがもうひとつ「店員さん」について書き加えたい。まず店のお姉さんたちがとにかく可愛いのである。俺はカウンターで飲んでいたのでテレビの相撲中継やメニューの張り紙を見るふりをして彼女たちを盗み見ることができたのだが、下手なガールズバーよりも愛想よく手際もいい。そしてそんな彼女たちを司る女将さんも素敵な方である。

帰り際、勘定の際に女将さんに「気に入ったお酒はありました?」と聞かれたので「No.6のS-type」と答えたら最後に小さなグラスでS-typeをサービスしてくれた。今までいろんな酒場に通ってきたがこんなことは初めてである。酒好きの畜生はその心遣いに感動した。

 

まだまだ「永楽食堂」を堪能したいところだが、次に向かおう。俺は名残惜しさを感じつつ秋田駅から羽越本線に乗り「羽後牛島駅」へと向かった。

羽後牛島の呑兵衛が集う「丸の内食堂」とは?

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羽後牛島駅」は秋田駅の隣駅にも関わらず、ひっそりとしていた。駅付近は暗く歩道にはまだ雪が残っていた。俺はゆっくりとその雪も踏みしめながら次の酒場へと向かった。

 

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歩くこと15分。住宅街にポツンと立っている酒場にたどり着いた。

 

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営業中という小さな札こそ確認できるが、店内の様子はわからない。酒飲みはほろ酔い気分でも初めて行く酒場についてはわずかに緊張する生き物である。恐る恐る店の扉を開くと従業員のお姉さんが愛想よく迎えてくれた。

 

座敷では常連さんが盛り上がっている。雪の猛威がひと段落したことで遅れた新年会と慰労会であろうか。皆、上機嫌に酔っている。俺はカウンターに座り瓶ビールからまた始めることにした。

 

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好物のやまかけをビールで流し込む。隣では年配のお父さんが半分居眠りしながら焼酎を飲んでいる。永楽食堂のような割れんばかりの活気こそないものの、2軒目でゆっくりと飲むにはこういったお店が俺は好きである。

 

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さてつまみをもう一品。どうやらこの店のおススメは肉鍋のようである。お姉さんに「ひとりで食べるには量がありますか」と聞いてみた。

「けっこう量はあります。私はペロッといっちゃいますけどね」とお姉さん。

「なるほど」と言いつつ一旦保留である。生粋の酒飲みは自分の酒の許容量については過大評価している節があるが、自分の胃袋においてはそれほど自信がないものである。

 

俺は肉鍋を断念し、厚揚げ焼きを頼んだ。厚揚げ焼きもまた好物なのである。

 

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厚揚げ焼きを頬張りつつ夜が更ける。気づけば手元のビールは焼酎に変わり、時刻も夜9時半を回っている。おかしい。さっきまで相撲中継を見ていたはずだが。電車に乗っている時間もあったが、かれこれ4時間以上飲んでいる。生粋の酒飲みはたまに時計が高速回転しているのではないかと錯覚するときがある。

 

夜10時で閉店ということで俺は少々危なっかしい体を引きずりつつ丸の内食堂を退散し、再び雪道に躍り出て最後にとある店へと向かった。

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アルコールの力で多少気は大きくなっているが、その扉を前にして一瞬俺はたじろいでしまった。店内からは誰かが歌っている堺正章の「さらば恋人」が聞こえてくる。俺は意を決してその扉を開いた。

 

「あら、いらっしゃい」

性別が定かではない店主(ソラちゃんと言うらしい)が「初めまして、よね?」と俺の耳元で囁いた。

「そ、そうですね」

緊張気味の俺に隣のカウンターで飲んでいた俺と同い年ぐらいの男性二人組が「一緒に飲みましょう」と声をかけてくれた。俺はビールを飲みながら周りを見渡した。

店内は常連客と思われる方々を中心にカラオケ合戦が繰り広げられており、そのたびソラちゃんが店の真ん中で激しく踊り、時にはマイクで美声をこだまさせている。

 

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「さあ歌って」

ソラちゃんがカラオケのリモコンを俺に手渡してくれた。

「か、カラオケは……」

 

俺はカラオケが苦手なのである。今までカラオケで70点以上を出したことがない。

 

「真ん中で歌うと気持ちいいわよ」

「そ、そうですかね」

 

恥ずかしながらここから俺の記憶が曖昧である。覚えている限りで書いていくが、この後俺は水のようにビールを飲み干し、2回か3回ほどそれをおかわりし根性を身につけた後ミスチルの「終わりなき旅」を熱唱した。

 

「いぎをぎらしでさぁぁぁ かげぬげだみっちをぉぉぉ」

 

それはさしずめ映画「ボーイズ・オン・ザ・ラン」の峯田和伸演じる田西が岡村孝子の「夢をあきらめないで」を熱唱したときのような塩梅で、「歌う」というよりもはや「がなる」というのが正しい形容で、俺は店のセンターに勢いよく飛び出し目を見開きシャウトしたのである。百戦錬磨の常連さんもさすがに唖然とする中、目の前にいたマッチョなお兄さんが「やるねえ」と言って笑ってくれたことは覚えている。

 

深夜0時。ソラちゃんが最後まで俺の帰りを心配してくれた。

「大丈夫っす」

大丈夫であろうとそうでなかろうと酒飲みはだいたい皆こう返す。そして店の外まで出て見送ってくれたソラちゃんに「また来ます」と言って手を振り歩き出した矢先、雪に滑って派手に転んだ。

 

そして翌朝は例の二日酔いである。そんなボロ雑巾のような俺とは対照的に外はまぶしいぐらいの晴天だった。

 

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雪に苦しめられた秋田の冬に差し込んだ光。東京にいたときは空が晴れて嬉しいと思うことなんてなかったな、と思った。

 

さて、今年も始まったKANEYANの秋田ぶらり旅。人生何百回目かの酒の飲み過ぎを反省しつつ秋田の個性的な酒場たちに別れを告げて、次回は羽越本線をさらに進んでみようか。

 

続く。