KANEYANの秋田ぶらり旅

KANEYANが秋田県内の各駅を回りながら綴るNONSTOP AKITA DIARY

#23 【出会い旅】【由利高原鉄道】「由利高原鉄道の終着駅・矢島の名物マドンナに会いに行く旅」とは?

■由利鉄の終着駅・矢島の名物マドンナに会いにいこう

 『ローカル線の最終駅には人生の大先輩が待っている』

 

春のポカポカ陽気を浴びながら、そんなネット記事を目にした。秋田の第三セクターのローカル鉄道「由利高原鉄道」の終着駅である矢島駅観光案内所の名物マドンナ・佐藤まつ子さんのことである。

そう、春は出会いの季節である。「旨いものを食べたい」とか「素敵な景色を見たい」とかそんな旅も悪くないが「誰かに会いたい」と思い旅に出るのはきっと格別である。

 

そんな洒落たことを思いながら俺は再び由利高原鉄道に乗るため由利本荘市へと向かった。今回は前回最後に訪れた「前郷駅」の隣駅である「久保田駅」から4駅先の由利高原鉄道終着駅・矢島駅を目指す算段である。

 

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本日のスタート地点である由利高原鉄道久保田駅に到着。青空の下、例の如く周りになにもない駅に放り出された花粉症の俺はさっそくド派手なくしゃみ3連発を広大な田んぼに向けてぶっ放した。

 

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久保田駅の待合室には地酒「蔵めぐりの旅セット」のポスターが貼られているのだが、そのすぐ下には『アルコール ほろよいだけでは すまないよ』という由利中学校2年板垣愛琉さんから酒を求める大人たちへの鋭い忠告が蔵めぐりの旅セットのポスターよりやや大き目のサイズで貼りつけられていた。

 

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「乾電池のパワーで鉄道走行距離20キロ達成」というなんだかピンとこないギネス記録達成の看板を横目に俺は次の「西滝沢駅」を目指した。

 

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西滝沢駅に到着。先ずは昼飯といきたいが、ここから矢島駅までの道中で昼飯を食べられるスポットは「西滝沢水辺プラザ」しかなさそうだ。場所を確認するとスタート地点の久保田駅の方角である。計画性の無い俺は鼻水を垂らしながらまたトボトボと来た道を引き返すのであった。

■地元民が集う交流施設のご当地カレーとは?

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西滝沢水辺プラザの食堂に到着。腹ペコの俺はこの施設で最も高価な贅沢メニューである550円の「由利牛カツカレー」を注文。「今、お持ちしますから」とお母さん。俺がだだっ広い和室に座るや否や、注文してから50秒ぐらいでカレーが到着した。すき屋以上のスピードである。

 

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由利牛カツカレーの味は、……ごめん普通だ。だがこの普通さがまた良いのである。春休みのため親子連れの姿が目立つ。地元の交流施設の広い和室にあぐらをかいて、地元民に混ざって食べるカツカレーは絶品ではないけれどココイチとはまた違う味わいがある。

 

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春の訪れに浮かれる子供たちに見守られながら今日の目的地である矢島を目指して旅の再開である。歩き進めていると田園地帯のど真中に小さな建物が見えた。「吉沢駅」である。

 

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由利高原鉄道では曲沢駅に続く「ポツンと駅舎シリーズ第二弾」の吉沢駅。もし仮にこの駅に降りてしまったら、果てしない田んぼのど真中で途方に暮れるのみである。

 

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そんな由利本荘市の魔境に降り立つ旅の勇者を今日も「吉沢駅」は待っている。

 

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吉沢駅を後にして、次の川辺駅方面に向かって歩いていると唐突にド派手な看板が現れた。

 

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青年部矢島支部の熱烈な想いが炸裂するポスターが貼られたその小屋は「元祖100円ランド」と書かれていた。地元の農作物の販売所なのだろうか。

 

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だがその中は荒涼たる雰囲気であった。残念ながら青年部矢島支部の元に出会いは訪れなかったようである。

 

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 ■由利高原鉄道の終着駅・矢島のスポットを巡る30分お散歩コースとは?

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子吉川を眺めながら歩いていると見えてきたのは「川辺駅」である。

 

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ホームに立って田園風景を眺めながら電車が到着するのを待つ。折角なので終点の矢島駅には電車で向かうことにした。

 

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おもちゃ列車仕様の「なかよしこよし」に揺られて終着駅に向かう。

 

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由利高原鉄道の終着駅・矢島に到着。ここ由利本荘市矢島町の萌えキャラ「松皮カンナ」ちゃんのパネルや駅構内に並んでいるちょっぴり微妙な由利鉄グッズも気になるが、まずは「まつこの部屋」がある観光案内所に向かうことにしよう。

 

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だが肝心のマドンナは「只今、まつ子リフレッシュ中」という言葉を残して不在である。タイミングが悪かったか。少し肩を落として駅を出ると駅前のベンチに腰をかけてひなたぼっこをしている和服姿のひとりのお母さんがいた。まつ子さんである。

 

「こんにちは。今の電車で来たの?」

まつ子さんは俺を見るなり声をかけてくれた。

「そうです。このへんで観光できるところはないですかね?」

夕方から近所の旅館を予約しているのだがまだすこし時間があるため、まつ子さんにおすすめの観光スポットを聞いてみた。

 

まつ子さんは「あるわよ」と言って駅に向かって歩き出した。そして先ほどの「まつこの部屋」に着くと「ここは城下町だからねえ」と言って俺に一枚の地図を見せてくれた。

 

「ここが駅で、すぐそこに羽後信金があるでしょ? そこを右に行くと天寿酒造。そこを真っすぐ進むと大井家。矢島でいちばん古い家ね。でも人が住んでるから見るだけよ。それからまた真っすぐ行くと神社があるから坂道を登って。これが近道だから。突き当りを右に行くと小学校があって、それを先に進むと龍源寺があって……」と地図に蛍光ペンを引きながら、矢島の観光ルートを丁寧に説明してくれた。

 

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俺はまつ子さんからもらった地図を頼りに天寿酒造で日本酒を眺め、矢島でいちばん古い家「大井家」の外観をチラ見し、神社の坂道を登り、小学校を超えて、龍源寺へと向かった。

 

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龍源寺をぐるりと一周し、矢島町歴史交流館「八森苑」、そして明治2年に建てられた武家住宅「佐藤政忠家」を眺めて本日の宿「三船旅館」に向かう。これがまつ子さんに教えてもらった矢島町の観光スポットを巡る30分お散歩コースである。

 

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■矢島の古き良き老舗旅館「三船旅館」とは?

矢島駅から少し歩くと風情のある旅館がある。城下町の香り漂うこの三船旅館に本日は一泊である。

 

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玄関を開けると若い女将さんが迎えてくれた。 部屋は昔ながらの和室である。奥の障子を空けると建物の裏手にさらさらと水が流れているのが見えた。

 

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晩御飯を待つ間、熱い風呂に入る。風呂は完全にひとり用である。まるで春休みに親戚のお家に来たような、この感じがたまらない。由利本荘を歩きまくってすっかりむくんだ足を風呂で癒したあとはお待ちかねの夕食である。

 

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女将さんにビールをお願いして、目の前の料理に全集中である。山菜の天ぷらが特に旨い。ここ最近少し出っ張ってきたお腹は、またさらに出っ張りそうな勢いだが俺はビールと一緒に目の前の料理を食い尽くした。

 

ちなみに旅館にひとりで泊まると、ひとつ困ることがある。飯を食うとやることがないのである。もう風呂にも入ったし遅くまで酒を飲んで語り合う仲間もいない。仕方ないので布団に潜り込む。まだ夜の8時である。だが幸い俺は腹が一杯になるとどこでもすぐに寝れるという特殊能力を兼ね備えているので、のび太君もビックリの早業で就寝モードである。

 

夜中、雨の音で目が覚めた。はて、雨が降る予報だったかなと思い障子を開けて外の様子を眺めてみる。すると、それは雨音ではなく、旅館裏の小さな川を流れるせせらぎの音だった。夜になるとその音がいっそう響き渡る。

 

朝。たいして疲れてもいないのに10時間以上寝た俺は、全くカロリーを消費する予定もないのに朝から納豆をかき回し、熱い味噌汁をがぶ飲みし、ご飯は3膳食べた。

 

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旅館を後にして矢島駅へ戻るとまつ子さんがさっそく俺を見つけて手を振ってくれた。

 

「三船旅館どうだった? 川の音が聞こえたでしょ? ちょっと待ってね。今お茶淹れるから」

そう言ってまつ子さんは俺にお茶を振舞ってくれた。桜茶である。

 

電車を待つ間、まつ子さんと三船旅館のことや俺の地元大仙市の花火のことなんかを話した。まつ子さんに淹れてもらった桜茶は春の味がした。

 

まつ子さんとお別れして、帰りの由利高原鉄道に乗る。間もなく発車しようかというときに、コンコンと電車の窓を叩く音がした。振り返ると、まつ子さんが「大仙から来てくれてありがとう」と書かれた手書きの紙を持って俺に手を振ってくれていた。

 

窓越しに俺も手を振り返した。電車がゆっくりと動き出す。

 

矢島に来て良かった。ゆっくりのんびりと進む電車の車窓からは春の鳥海山が見えた。

 

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さて、今回はぶらぶらと由利高原鉄道の終着駅にやってきたKANEYANの秋田ぶらり旅。ひとまずこの古き良き城下町にて由利高原鉄道に別れを告げて、次回は番外編として秋田20年ぶりの新駅となるJR奥羽本線・泉外旭川駅周辺をぶら散歩してみようか。

 

続く。