KANEYANの秋田ぶらり旅

KANEYANが秋田県内の各駅を回りながら綴るNONSTOP AKITA DIARY

#25 【ぶらり旅】【JR奥羽本線】「秋田駅から強首温泉を目指すコロナ禍の奥羽本線各駅降車の旅」とは?

■コロナ禍の奥羽本線各駅降車の旅とは?

東北を旅するなら5月である。

 

と、何かの本に書いてあった。たしかにこの時期の気温は旅をするにはちょうどいい気がする。だがコロナの影響でここ秋田もかなりナイーブな状況である。秋田屈指の歓楽街「川反」のガールズバーでド深夜までレモンサワーを浴びていたころが懐かしい。

 

それでも俺は旅に出たいと思う。だって5月だもの。だが秋田でも感染者が増加しているこの時期である。堂々と旅をするにはどうも忍びない。そこで俺はこの旅においてひとつルールを設けることにした。それは「声を発しない」ということである。つまりは無言の旅である。あちこち歩き回ったとしても声を出さなければコロナにかかるリスクはゼロに近づくはずだ。もはやそこまでするなら家でおとなしくドラクエでもしていたほうが賢明な気もするが、それでも俺は旅に出たいと思うのだ。だって5月だもの。

 

そんなわけで俺は「秋田駅」から大曲・横手方面に向かうJR奥羽本線に乗車した。今回は例によって全ての駅に立ち寄りつつ「秋田駅」から5駅先の「峰吉川駅」、そしてそこからもう少し足を伸ばし大正ロマン漂う強首温泉を目指す計画である。

 

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先ずは秋田駅の隣駅である「四ツ小屋駅」に降車した。主要道路から離れているせいか、駅付近は閑散としている。

 

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学生御用達の駅なのか、駅前には大量のチャリンコが並んでいる。そして秋田県民しか理解できないであろうオレオレ詐欺の注意喚起の看板が掲げられいる。そう、じぇんこの振り込みには注意である。

 

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ひとまず次の電車時間まで駅付近をぶら散歩。駅から2キロほど歩いたところにある「弥生っこ村」に向かってみることにした。

 

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「弥生っこ村」は木柵に囲まれた弥生時代前期の集落が再現されており、国の史跡にも指定されている。

だが人の姿は見当たらない。年配のお父さんがひとりひなたぼっこをしていた。

 

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ここ弥生っこ村では実際に住居の中にも入ることができる。だが入口が非常に狭いためゴツンと頭をぶつけたことは言うまでもない。

 

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弥生っこ村を後にして、四ツ小屋駅まで戻る。時間の配分を誤ってしまい駅まで小走りする羽目になった。そんなやるせない俺を農作業をしているお父さんが訝しげな顔で見ていた。

和田駅近くにあるお寿司屋さんの絶品かつ丼とは?

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息を切らしつつ四ツ小屋駅から電車に乗り一駅隣の「和田駅」へ。駅に着くとその足で俺はとある寿司屋へと向かった。

 

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その外観はまさしく寿司屋である。だがいざ店内に入ってみるとカウンター前の冷蔵ショーケースには魚は全くいない。メニューを開くと丼ぶりにラーメンが並び、そして後ろのページにようやく寿司が登場するという不思議な店である。

 

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店内でも寿司を食べている人は誰もいない。そう、この店の隠れた名物は地元の大張野豚を使った「かつ丼」と「バリコロ焼」のようである。腹ペコの俺はかつ丼を注文した。男は黙って、かつ丼である。

 

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かつ丼が到着。もちろん旨いに決まっているのだが隣の山菜入りの味噌汁も主役のかつ丼を存分に引き立てている。

 

カウンターの端っこにはテレビが備え付けられており、そこに映る「バイキング」ではいつものようにコロナ禍を憂いている。俺はこれまたいつものように半ギレなテンションの坂上忍さんの声を聞きながら、中学生男子の如く、かつ丼を食らった。コロナ禍を憂うよりも、その前にまずは目の前のかつ丼である。

 

ちなみにこの店の本棚には往年の名作「GTO」や「花の慶次」に挟まれて「生徒会長のヒミツの願望」なんていうちょっぴり刺激的な少女コミックも置いてあるので、なかなか侮れない。

 

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かつ丼を完食したところで各駅降車の旅の再開である。俺は和田駅から再び奥羽本線に乗り、隣駅の「大張野駅」に向かった。

 

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大張野駅に到着。もはやコロナ禍でも絶対安心安全の人の気配皆無の無人駅である。

 

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駅自体は比較的新しいが、周辺からは人を寄せつけないオーラが感じられる。もはやこのエリアは秋田市と大仙市に挟まれた魔境である。

 

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あてもなく歩いていると、春風に乗って独特な臭いが立ち込めてきた。最近気になる俺のオヤジ臭……、じゃなくて豚の臭いである。どうやらこの地域は養豚が盛んで先ほど俺が食べた大張野豚はここが出身地なのである。

 

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駅から少し歩くと鳥居が見えてきた。鬼子母神社である。

 

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鬼子母神社。明らかに名前負けしているその殺風景な神社をチラ見して、大張野駅にUターンすることに。だがまたまた時間の配分を誤ってしまった俺は駅まで小走りする羽目になった。そんなやるせない俺を大量のカラスたちが訝しげな顔で見ていた。

■安産祈願にお勧めの大仙市のパワースポットとは?

大張野駅から奥羽本線に乗って本日4つ目の駅「羽後境駅」へ。プチ秘境モードの「大張野駅」とは異なり駅前には民家や商店が並んでいる。

 

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駅を出て向かったのは安産祈願に効果抜群と有名な「唐松神社」である。

 

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杉並木が並ぶ参道を歩き境内へ。趣きのある良い神社である。お腹の大きな奥さんとご主人のカップルが参拝に来ていた。

 

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「安産祈願」におススメの神社ということで、独身・家事全般お母さんにやってもらってます系男子の俺にはあまり関係ないように思われたが、一応この神社は「縁結び」も兼ねているということでそこは全力で祈願した。

 

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参拝を終えると駅近くにある喫茶店で小休憩。雰囲気の良いお姉さんが営むシャレオツな店である。

 

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歩き回って疲弊した体にアイスコーヒーが染み渡る。帰り際会計を済ませるとお姉さんがお土産にお菓子をくれた。小さな桜色の和菓子である。

羽後境駅でさっそくそれを頬張りながら俺は本日の目的地である「強首温泉」を目指して再び奥羽本線に乗った。

大正ロマンの香り漂う「強首温泉」とは?

羽後境駅から電車に乗って「峰吉川駅」に到着。周りに銀行や喫茶店があった羽後境駅に比べると幾分のどかな駅である。

 

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ここから本日の目的地「強首温泉」までは約4.5キロだが残念なことにバスは通っていない。歩いて1時間ほどの道のりを俺は意を決して歩くことにした。

 

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温泉に向けてひたすら歩いていると、廃墟と化した直売所が現れた。

 

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「澄子の大根」「愛子の店」「昔なつかしい駄菓子屋」「本間店や」もはや情報量が多すぎるこの店だが遠い昔は地元のお母さんや子供たちの憩いの場所だったのだろうか。

 

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さて、既に夕方も近くなってきたが今日は全く声を出していない。正確には「かつ丼ひとつ」と「アイスコーヒー」というふたつの言葉は発したが、合計しても14文字である。つまるところ俺はこの日の旅のルールを愚直なまでに守っているのだが、ひとりの旅は時に気楽で時に寂しい。人を避けて通らねばならないコロナ禍の旅はやはりどこか味気ない。

 

と、そんなことを思った矢先である。目の前で1台の車が止まってサイドガラスが開いた。年配のお父さんである。

「お兄ちゃん、どこまで行くの?」

「強首温泉です」

「んだば、乗ってげ」

「マジすか」

 

この「秋田ぶらり旅」2度目の逆ヒッチハイクである。お父さんからここ強首エリアの歴史を教えてもらいながら、温泉へと向かった。わずか5分ほどの時間ではあったが、その間俺は愚直なまでに守っていた「無言」のルールをあっさりと破り、お父さんと話し込んだ。コロナ禍においても、人情はそこにある。

 

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お父さんの車で強首温泉「樅峰苑」にたどり着いた。

 

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大正ロマンの香り漂うこの古き良き温泉で本日の旅の疲れを癒す。コロナ禍のため館内を歩き回ることはできなかったが、館内の随所に当時の面影が残っていた。ちなみにこの宿の名物は近くを流れる雄物川で獲れたモクズガニのようである。

 

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貸し切り状態の温泉ですっかりのぼせ気味の俺は再び4.5キロを歩く気力は残っておらず、フロントの方にタクシーを呼んでもらった。

 

峰吉川駅まで」

タクシーの運転手にそう言って財布を調べてみると、あろうことか2,000円ちょっとしかない。

「か、カードは使えますか?」

「今、機械が壊れてまして……」

「……マジすか」

 

俺はタクシーの料金メーターをにらみ続けた。2,000円を超えたら恥を忍んで途中でも降ろしてもらおうと思っていたのである。

 

峰吉川駅に到着。料金は2,080円。小銭をかき集めたら何とか払うことができた。

 

文字通りホッとため息ついて胸をなで下ろし、切符を買うために再び財布を出す。だがどこをほじくり返しても小銭すら満足に出てこない。近くにコンビニや銀行は見当たらない。せっかくタクシーを使ったにも関わらず俺はまた彷徨い歩いた。

 

無言ルールを破った罰か。いやただ計画性がないだけである……。

 

さて、今回は秋田駅から奥羽本線に乗ってコロナ禍の秋田市・大仙市エリアを歩き回ったKANEYANの秋田ぶらり旅。何はともあれ少しでも早いコロナ禍の終息を願いつつ、次回は秋田が生んだ名俳優である柳葉敏郎の故郷・刈和野から花火の街・大曲を目指す旅に出てみようか。

 

続く。