KANEYANの秋田ぶらり旅

KANEYANが秋田県内の各駅を回りながら綴るNONSTOP AKITA DIARY

#27【ぶらり旅】【JR奥羽本線】「地元民が集うスポットを巡りながら大曲駅から横手駅を目指す初夏の奥羽本線各駅降車の旅」とは?

■地元民が集う大曲駅前の渋い喫茶店とは?

秋田には帰りたくない。

 

先日、出身者の都道府県別「移住(Uターン)意欲」ランキングというものが発表された。ちなみに俺が暮らしている秋田県は堂々の47位である。

 

一度抜け出したら絶対に帰りたくない秋田。

若者離れがジョットコースター並に加速する秋田。

ヒルナンデスで紹介される首都圏の最新グルメやスポットなど遠い異国の話だよ秋田。

 

秋田はもう死んでいる。(全国自殺率第2位)

 

と、梅雨空に向かって秋田の田んぼの真ん中から憂鬱を叫ぶ2021年のファーストサマー。だが嘆いているばかりでは始まらない。超不人気の秋田の魅力を1ミリでも見つけるため俺はこの「秋田ぶらり旅」を書いている。

 

というわけで今日も俺は秋田を旅して「何か」を見つけるべくJR大曲駅へと降り立った。例によって今回も奥羽本線の各駅に立ち寄りつつ3駅先の横手駅を目指す算段である。

 

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奥羽本線に乗る前に、先ずは駅前で腹ごしらえである。だが時刻は午前10時。ほとんどの店がまだ準備中である。そんな中、俺は駅前のとある喫茶店に目をつけた。

 

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少し埃臭い急勾配な階段を昇る。外観は昔タケノコ剥ぎにあった赤羽の違法風俗店のような雰囲気である。本当に大丈夫か。緊張気味に店の扉を開くと店内には誰もいない。えっ? マジで。だが店内は明るくテレビもついている。呼びかけてみたが反応がない。

 

「あら、いらっしゃいませ」

 

しばらくウロウロしていると、入口の扉が開いて牛乳を持ったお母さんが登場。牛乳をもってどこに行っていたかは不明だが、ひとまず営業中のようである。せっかくなので階段の横に張り紙がしてあったオススメのスパイシーカレーを注文した。

 

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カレーを食べていると、高齢のお母さん2人組が来店。どうやら1人がこの店の常連のようで、その人が駅前の病院で意気投合したもうひとりのお母さんを連れてきた、という塩梅のようである。

「メニュー? オラなんでもいい」

まさかのオマカセコース。さすが常連である。

「オラの年金だば、全部病院代に持ってがれる」

お客のお母さんたちの嘆きのブルースを聞きながら食べるスパイシーカレーはクセがなく食べやすい。お年寄りもサラッと食べられるのではないだろうか。

 

「たまにはこういうどごさ来てママ食うのもいいな(たまにはこういう所でご飯を食べるのもいいね)」

 

そう言って、お母さんたちは食べやすいように細かくカットしたトーストを頬張っている。病院で友達を作り、病院近くの喫茶店でトースト片手に語りあう。高齢のお母さんたちの新たなライフスタイルがここ秋田の県南エリアで構築されようとしている。

■地元民が集う飯詰駅近くの隠れ家的カフェとは?

スパイシーカレーでお腹を満たした俺はその足で大曲駅から奥羽本線に乗り、隣駅の「飯詰駅」へと向かった。

 

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大曲駅の隣駅である飯詰駅秋田県仙北郡美郷町に位置している。美郷町は人口が2万人にも満たない小さな町で、県南の玄関口である大曲駅付近に比べると、飯詰駅の周辺はのんびりとした空気が漂っている。

そんな飯詰駅から5分ほど歩くと一軒の小さなカフェがある。

 

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平日にも関わらず、店内は地元民で賑わっている。高齢の夫婦から20代の美郷ガールズまでその年齢層は幅広い。

ちょうど昼時だったため店内はランチタイム。だが先ほどスパイシーカレーを食べた俺の胃袋はすでに満たされているため、レモネードなんとかジュースとミックスベリーとなんとかのシフォンケーキをオーダーした。

 

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ふわふわのシフォンケーキを甘酸っぱいレモネードのジュースで流し込む。そんな37歳の昼のひとときがあったっていいじゃない。2階の窓からは隣の家の田んぼが見える。一面に広がる少し背伸びした稲穂を見ながら、シフォンケーキについているオレンジを齧る。そんな37歳の昼のひとときがあったっていいじゃない。

 

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そんな地元民が集うオシャレカフェを堪能した後は、ぶらり旅の再開である。俺は飯詰駅から再び奥羽本線に乗って隣の「後三年駅」へと向かった。

 

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この地が平安時代末期に起きた「後三年の役」の古戦場だったことが、駅名の由来となっているようである。

 

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せっかくの良い天気なので、次の電車時間まで駅周辺をぶら散歩。同じく後三年の役をモチーフにした歴史公園「平安の風わたる公園」まで歩いてみることにした。

 

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公園の中心部には合戦の様子が描かれた壁画や登場人物のブロンズ像が設置されている。

 

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そんな平安の「つわものたち」に囲まれた公園のベンチにはひとりの中年男性が座っていた。

外回りの休憩中なのか、くたびれたシャツを着た中年男性の佐藤隆史さん(仮名)はハンカチで汗を拭きながらぼんやりと佇んでいる。6月の昼下がり。そう、平安時代も、この令和の時代も男はいつでも何かと戦っているのだ。

 

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公園を後にして、再び後三年駅に向かって歩いていると高齢のお父さんたちがゲートボールに勤しんでいるのが見えた。美郷町のお父さんたちは元気である。汗をかいた後はすぐ近くの雁の湯温泉「湯とぴあ」で汗を流し、風呂上りにビールを飲んでごろ寝をかます。そんな老人に私はなりたい。

 

■地元民が集う横手駅前の大衆食堂と元祖ホルモン焼きそばの店とは?

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後三年駅から再び奥羽本線に乗り、本日の目的地である「横手駅」へ。秋田県東南部に位置する人口約8万4千人の「横手市」は秋田屈指の豪雪地帯としても有名である。そんな雪降る町の駅前には昼酒ウエルカムの大衆食堂があるのだが、本日はここ「池田屋食堂」でひとり乾杯といこう。

 

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店のお母さんと常連のお父さんの世間話を聞きながら、ところてんを啜る。お母さんたちの話題はもっぱら数日前に横手市内のどこかの家で飼っていたカドクラ、……じゃなくてイグアナがふらっとどこかにいなくなってしまった「横手市イグアナ脱走事件」である。

「見つけたら焼いて食っちまえ」と 常連のお父さんが鼻息を荒くしていると、ちょうど夕方の県内ニュースでイグアナが見つかったというニュースが流れた。どうやら横浜のカドクラに続き横手のイグアナも、自宅に無事帰宅したようである。

 

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俄然勢いが増した俺はコップ酒を注文。そして並々と注がれた酒にホタルイカの沖漬けとワラビを合わせる。そう、男は黙ってコップ酒である。

 

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すっかりほろ酔い気分の俺は駅前の古き良き大衆食堂を後にして初夏の横手を歩いた。もちろんコップ酒のおかげで気分は上々である。ほろ酔い気分のまま真っすぐ帰ればよいものの、ふらふらともう一軒。いつもの悪い癖である。

 

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本日の2回戦の会場に選んだのは元祖ホルモン焼きそばの店「まいど」である。

 

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カウンターに座った俺の目の前ではスーパーファミコン時代の名作「ストリートファイターⅡ」に出てくるブランカのような腕っぷしをした屈強な男たちが黙々と焼きそばを焼いている。活気のある良い店である。

 

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もっぱら塩分を気にするお年頃の俺だがここはひとつ焼きそばを食わねばならない。ちなみに俺の焼きそばを作ってくれたのは、坊主頭の高校球児のような風貌の若い男の子だった。

 

「ずいぶん慣れたか」

「いや、まぁ」

 

常連のお父さんたちに照れ笑いを浮かべながら、熱い鉄板で焼きそばを焼いてくれた。その顔にはまだ幼さが残るものの、すでに職人としての気質が備わっているように思えた。

 

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焼きそばが完成。俺はビールを飲み干すと焼きそばにかぶりついた。そのビジュアルとは裏腹に意外とあっさりしている。ホルモン入りにしなかったことを少し後悔した。

 

夜7時を過ぎると、地元の常連さんで店は混雑し始めた。それでも俺の焼きそばを作ってくれた彼は顔色ひとつ変えずに大人たちに交ざって額に汗をかきながら引き続き熱い鉄板で焼きそばを焼いていた。

 

横手カルチャーはこうして若い世代に受け継がれていくようだ。

 

良い店だな。また来よう。

 

飲んで食べてすっかり夢心地のオジサンはまだ薄っすらと明るさが残る横手の街を歩きながら、ふとそう思ったようである。


さて、今回は県南の主要駅である大曲駅から横手駅への各駅降車の旅を敢行したKANEYANの秋田ぶらり旅。秋田で真面目に働く若者を横目にヒマさえあれば酒ばかり飲んでいる自分を少しだけ恥じながら、次回はさらに奥羽本線を先に進んで、秋田のB級グルメ界のニューウエーブ「十文字ラーメン」で有名な「十文字駅」を目指してみようか。

 

続く。