KANEYANの秋田ぶらり旅

KANEYANが秋田県内の各駅を回りながら綴るNONSTOP AKITA DIARY

#34【年末ひとり旅】【秋田内陸縦貫鉄道】「上桧木内の人情旅館を目指す秋田内陸縦貫鉄道各駅降車の旅」とは?

■内陸線・松葉駅近くにある独自路線の老舗ラーメン店「かしわ家」とは?

まもなく2021年が終わる。

 

37歳、独身。今年プライベートで女性と会話をしたのは母、姉、親戚のおばさん、そしてテレビの向こうの芦田愛菜ぐらいである。今世界中の孤独が俺と先日3度目の離婚をした「いしだ壱成」に集められているのではないか。そんなことを考えていたら家の玄関の前ですっ転びそうになった。もはやたまたま通りかかった野良猫でさえも俺のことを「なんだこいつ」という目で見ている。

 

やばい。またもや得意のロンリーポエムを奏でてしまった。こんなのをたまたまネットサーフィンしていた芦田愛菜に見られたら確実に嫌われる。ここはひとつこの大人気ブログ(1日平均閲覧者数5人)で旅好き女子が喜ぶ秋田のスペシャルスポットを紹介して、モテモテ秋田ブロガーの称号を手にしよう。

 

そんなわけで俺は寂しさと切なさと心強さを小さなリュックに詰め込んで今年最後の旅に出た。雪と共に行く冬至秋田内陸縦貫鉄道の旅。今回は前回の旅で最後に訪れた「羽後長戸呂駅」の隣駅である「松葉駅」からスタートである。

 

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角館駅から内陸線に乗り「松葉駅」に到着。今回はここ松葉駅から3駅先の「上桧木内駅」を目指す計画である。

 

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この地域では小正月行事として、上半身裸の男たちが雪を踏みしめながら勇ましく集落を走り回る「松葉の裸参り」が行われているようだ。ちなみにYouTubeではふんどし姿の地元の猛者たちが冷たい川に飛び込んでいくガキ使の罰ゲームをも凌ぐパンキッシュな動画を見ることができる。要チェックだ。

 

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そんな屈強な漢たちが支えているここ仙北市西木町桧木内だが、このエリアの名スポットのひとつが松葉駅近くにあるラーメン店「かしわ家」である。

 

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店内に入ると人の良さそうなお父さんが迎えてくれた。どうやらお母さんが料理担当で、お父さんが接客担当のようである。

 

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店の壁にはDIY感満載のメニュー写真と絵が並んでいる。どうやら味噌ラーメンが看板メニューのようである。大黒柱の白みそにするか、特製辛口の赤みそにするか。そういえば最近辛い物を食べるとどうも肛門がゆるい。無人駅が続くこのエリアでは満足にトイレもないだろう。腹が下った日にはもはや地獄行きだ。

そんなわけで今回は「白みそラーメン」を注文。店内は平日にも関わらずなかなかの賑わいである。若い男子から高齢のお父さんまでこの店のラーメンを求める漢たちが全員集合。噂通りの人気店のようだ。

 

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白みそラーメンが到着。名前の通り真っ白なそのラーメンは他に類を見ない独自路線の仕上がりである。枝豆大豆の独特の風味が印象的だが、大き目のすり鉢の中にさまざまな野菜がぶっこまれている。めくるめく味のパノラマ。ちなみに真ん中にちょこんとカボチャが乗っているのは、この日が冬至だったからだろうか。

ふと周りを見渡すと隣のお父さんは赤みそラーメンを食べていた。また別のお父さんは「ここに来たらチャーハンを食べなきゃダメだ」と声高らかに宣言していた。

まだまだ計り知れない仙北市西木町(旧西木村)に残る創業44年のかしわ家。人口減少により周りの飲食店が廃業する中、孤高のラーメン店は今日も地元住民の胃袋を支えている。

秋田内陸縦貫鉄道屈指のポツンと駅「左通駅」を目指す年末歩き旅とは?

ラーメンを食べ終えた俺は松葉駅へ戻り再び内陸線に乗った。車内は暖房が効いていて温かい。本音を言えばこのまま昼寝でもかましながらぼんやり終点まで電車に揺られていたいところだが「全ての駅に立ち寄る」というのが一応このブログのルールである。もはや誰に求められているわけでもないのに、頑なにそのルールを遵守している俺はホカホカの電車を捨てて、クソ寒い師走の風が吹きすさぶ隣駅の「羽後中里駅」に降り立った。

 

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次の電車が到着するまで果てしない時間があるため、必然的に次の駅「左通駅」までは歩いて向かうことになる。この日の最高気温は氷点下2℃。もはや並の精神力と足腰ではギブアップしてしまうレベルである。

 

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駅前の地元密着型の酒屋をチラ見しつつ、左通駅を目指す。

 

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だがそこから待っていたのは延々と続く殺風景な山道である。さっきの酒屋には自販機があったはずだ。そこで何か温かい飲み物でも買えばよかった。通りすぎていく後悔と冬景色。たまに通り過ぎるトラックがそんな俺を怪訝な顔で見ている。頬を刺す冷たい風と垂れる鼻水。いつだって男のひとり旅は孤独交じりだ。

 

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そんな俺の行く手を阻むかのように空から雪が降り注ぐ。この日は寒さを想定してガンダムのような完全防寒装備をしてきた俺だが、それでも震えが止まらない。冬の歩き旅は命懸けである。

 

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瞼に光る冷たい雫がもはや雪なのか涙なのかわからなくなってきたころ、ようやく左通駅を発見。

 

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左通駅。まるで自己主張する気の無いその駅は、完全に冬景色と同化していた。

 

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左通駅近くの名所はおそらく修行僧しか立ち寄らないと思われる。

 

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駅の待合室には秘境駅やポツンと駅名物の旅ノートが置かれ地元の小学生が書いた内陸線のポスターも貼られていた。ポスターの車掌さんが軍人みたいな顔をしているのはご愛敬である。

 

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左通駅から内陸線に乗って、今日の目的地である上桧木内駅へ。今夜は上桧木内駅近くの旅館に宿泊である。

■上桧木内駅の人情旅館で味わうマタギ料理と自家製のどぶろくとは?

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上桧木内駅に到着。俺はその足で事前に予約済みの旅館へと向かった。

 

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上桧木内駅から歩いて10分ほどのところにある「なか志ま旅館」は旅館内に食堂が併設されており、昼間は地元民の食事処として営業している。

 

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前回日没後に真っ暗闇の中、羽後長戸呂の民宿を目指して歩く羽目になったことを反省し、今回は早めに旅館をチェックインした。だが如何せん早すぎた。まだ昼の3時である。

 

「まだ時間が早いのでどこかに出かけます?」

70歳ぐらいの優しそうなお母さんがこの旅館を切り盛りする女将さんのようである。

「どこか歩いて行ける観光スポットはありますか?」

絶対に無いと思いながら、聞いてしまった。案の定女将さんは「ないですね」と少し困り顔である。

 

「寒いので食堂で温まってください」

「すいません」

女将さんに淹れてもらったお茶を啜りながら、夕方のテレビをぼんやりと眺める。目の前に瓶ビールの小ケースが見える。ビールを貰おうかとも思ったが、晩ご飯前に行儀が悪い気がして思いとどまった。

 

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夕方4時。晩ご飯を待つ間、寝床である和室に戻りニンテンドー3DS桃鉄を始める。もはや何をしに来たのかわからなくなってきたが、今はひとまず飯を待つしかないのである。

 

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桃鉄を2時間しっかりとプレイした後はお待ちかねの夕食の時間となり、女将さんが再び食堂に案内してくれた。

 

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「熊鍋食べたことある?」と女将さん。

以前、地元の酒場で熊肉入りのカレーを食べたが熊鍋は初めてである。熊肉は内陸線を更に進んだ阿仁地方では盛んに食べられているようだが、まさかここで食べられるとは思わなかった。

 

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「ビールも貰えますか?」

わざわざ寒い中歩き旅をしたのはある意味このためである。

「ええ、いいですよ」

「お願いします」

「あと、自家製のどぶろくもあるよ。飲んでみる?」

どぶろくですか?」

 

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熊鍋をつつきながら、女将さんお手製のどぶろくを嗜む。熊肉は思いのほかクセがなく食べやすい。今年は熊肉が豊作だったようだ。

「元気にしてるか。こっちは雪だよ」

厨房では女将さんが電話中である。都会に住むお孫さんだろうか。嬉しそうに話す女将さんの声を肴に、どぶろくを進める。ふとこんな年末も悪くないと思った。

 

どぶろく、もっと飲む?」と電話を終えた女将さん。

「すいません、もう一杯」

ほろ酔い気分で人情旅館の風呂に入る。隣の洗面所からは洗濯機を回す音が聞こえた。

 

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翌朝、食堂のテレビでZipを見ながら朝ご飯。なぜか旅先では朝の食欲が増す俺は納豆と長芋でご飯を2膳食べた。

朝から満腹気分で部屋に戻ろうとすると中学生ぐらいの女の子と鉢合わせした。女将さんのもうひとりのお孫さんだろうか。今は冬休みのはずなので、もしかしたら部活か何かがあるのかもしれない。手早く準備をするお嬢さんとは対照的に、腹をさすりながら呑気に歩くネクストおっさんジェネレーションの俺。悪いことをしているわけではないが、なんだかちょっぴり我を恥じた人情旅館の朝である。

 

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「滑るから気をつけて」

女将さんに見送られて、駅へと向かう。俺は女将さんに言われたとおり、滑らないように足元を気にしながら歩いた。朝の上桧木内には陽が差していた。

 

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さよなら2021年。どうか2022年は俺といしだ壱成が幸せになりますように。

 

鷹巣まで続く内陸線の線路を眺めながら星の降る駅にそう願いを込めると、突然冷たい雪が頭上に降り注いできた。

 

そんな俺を知ってか知らずか、内陸線がのんびりとやってくる。小さな電車は俺を乗せると、呑気な音を立ててまたゆっくりと走り出した。

 

さて、今回は秋田内陸縦貫鉄道で上桧木内駅を目指した年内最後のKANEYANの秋田ぶらり旅。来年はタイトルが「KANEYANと○○の秋田ふたり旅」に変わることを願いつつ、ひとまず次回はさらに内陸線を進んでマタギの里「阿仁マタギ駅」や「比立内駅」を目指してみようか。

 

続く。