KANEYANの秋田ぶらり旅

KANEYANが秋田県内の各駅を回りながら綴るNONSTOP AKITA DIARY

#36 【冬旅】【秋田内陸縦貫鉄道】「阿仁合駅前の人情酒場を目指す大寒の秋田内陸縦貫鉄道ぶらり旅」とは?

マタギの里の最終兵器・駅前食堂の「ゴジラライス」とは?

忍び寄るオミクロンと除雪車

 

冬の秋田県民は除雪車が家の前を通る音で目を覚ます。まだ陽の昇らない暗闇の中、早朝からせっせと雪よせのためスコップとスノーダンプの音が響き渡る秋田のリアル。更に最近は秋田でもオミクロン株の影響でコロナ感染者が増えており、もはや秋田の明るい話題と言えば県内出身のグラビアアイドルももなちゃんが週刊FLASHで超ド級のMカップバストを披露したことぐらいである。

 

そんな中、俺は性懲りもなく真冬の内陸線・比立内駅にいた。季節は大寒。もはや旅に出るよりコタツでみかんでも食べながら、巨乳アイドルのパイオツを眺めていたほうが賢明なのはわかっている。だが俺は行く。事前に予約した阿仁合駅前にある酒場の店主が、俺の大好物である馬刺しを用意して待っているのだ。そんなわけで今回はここ「比立内駅」から5駅先の「阿仁合駅」にある人情酒場を目指す酒と馬刺しに魅せられたコロナ禍のお忍び旅である。

 

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「比立内駅」は前回の旅で最後に訪れた駅だが、相変わらず駅の入口に佇んでいる木彫りの熊は鋭い眼光で駅の利用者をひたすら威圧している。

 

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俺は駅を出ると5分ほど歩いたところにある食堂「ニュー安滝」へと向かった。そう、前回の旅で最後に酔った勢いで激辛ラーメンを食べた店である。実は比立内駅を出ると阿仁合駅までしばらくご飯処が無いため、ランチ営業もしているこの店で少し早い昼飯を食べようという魂胆である。

 

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前回、夜に訪れた際は美人なママさんもいらっしゃったがランチは寡黙なご主人がひとりで切り盛りしている。さて、何を食べようか。マタギの里ということで桜肉定食も気になるが、豊富なメニューの中から俺がチョイスしたのは「ゴジラライス」である。

 

ゴジラライス。それはゴジラの体格のように、超ド級メガ盛りご飯なのか。それともゴジラが吐く放射熱線のように、超灼熱の激辛料理なのか。だが俺はそろそろ糖質を控えねばならないお年頃だし、最近は辛い物を食べるとすぐ下痢になる。ゴジラに俺のナイーブなケツを破壊させられたらどうしよう。そんなことを考えていると、噂のゴジラライスが到着である。

 

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なるほど。その正体は豚モツをスパイスで煮込んだカレー風の料理である。これはこれで旨いのだが、それほど辛くもないしゴジラ感は影を潜めている。どちらかと言えば皿の隅に陣取っているラッキョウからやけにノスタルジーを感じる一品だ。

カレーなようで、カレーとはちょっと違う懐かしくて新しいマタギの里の最終兵器。だがなぜこれをゴジラライスと名付けたのだろうか。肝心なことをご主人に聞くのを忘れてしまった。

秋田内陸縦貫鉄道無人駅を巡る大寒の歩き旅とは?

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腹がいっぱいになったところで比立内駅から再び内陸線に乗って隣の「岩野目駅」へ。予想通り駅周辺に人の気配はない。だがさんざんこの旅で無人駅を渡り歩き鋼のメンタリティを手に入れた俺は、孤独に屈することなく歩いて次の駅を目指すことにした。

 

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笑内駅に到着。おしっこが漏れそうだったため用を足そうと駅のトイレに駆け込むと、除雪作業中だった先客のお父さんのお尻がセイハロー。「あっ、スイマセン」「こちらこそスイマセン」オカシナイのトイレを巡ってオッサンふたりが平謝り。周囲にコンビニなどが皆無のこの地域では、笑内駅の公衆トイレが男たちの貴重な排尿ポイントのようである。

 

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徒歩旅は続く。さらに歩いて隣の萱草駅へ。チクショー疲れたぜ。寒いぜこの野郎。それにしてもなぜ俺は歩いているのだろう。寒さと疲労でさすがの鋼のメンタリストも、ここに来て自分に迷いが生じているようである。天気が良いのがせめてもの救いだ。

 

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あぶないぞ! ひっぱられたら 大声だ

 

阿仁合小学校4年生松橋麗さんの変質者に対しての注意喚起を横目に、黒いジャンパーに黒いズボン、黒い帽子を被りマスクに眼鏡姿の俺は萱草駅に到着した内陸線に乗った。

 

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荒瀬駅に到着。いよいよ隣の駅が本日の目的地「阿仁合駅」である。俺は疲れたアラフォーの体に鞭打ち、歩いて阿仁合駅を目指した。

 

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だがここに来てそれまでは快晴に近かった天候が悪化。いくつになっても移ろいやすい冬の天気と女心の操縦は困難だ。俺は阿仁のお天道さまに翻弄されながら駅がある中心街を目指した。嗚呼、早く酒が飲みたい。駅前の人情酒場はもうすぐである。

秋田内陸縦貫鉄道の全てを投じた阿仁地域のシンボル「阿仁合駅」とは?

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阿仁合駅到着。2018年にリニューアルしたばかりの駅舎はさっきまでの無人駅とは打って変わって、その斬新なデザインに秋田内陸縦貫鉄道の意気込みが伝わってくる。他の駅はスルーして全てはこの駅に。まさに阿仁合駅は内陸線の資金や熱量を全フリした駅である。

 

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駅構内には観光客向けにお土産用の売店もしっかり完備。駅の隣には内陸線の資料館も併設されている。

 

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駅前には珍しい無人の本屋さんがある。こんなに寒い日は心温まる瀬戸内寂聴先生の短編集がおススメだ。

 

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酒場に向かうにはまだ時間が早いため、駅の中にある食堂で休憩。普段は絶対食べないものに、なぜか手を出してしまうのが旅のマジックである。俺は店前の看板に魅せられて、上桧木内産の甘酸っぱい木イチゴが添えられたミニパフェと紅茶をオーダーした。

 

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ミニオジサンとミニパフェの大いなるミスマッチ。キンキンに冷えた木いちごを侘しさと一緒に紅茶で流し込む。それしても冷たい。パフェというより、完全にアイスである。これはいろいろと間違えた。ひとり呟く阿仁合の昼下がり。まぁそんなこともある。冷えた体がさらに冷えたところで、売店のお母さんに尋ねてみる。「このあたりに観光スポットはないですか?」「観光? 特にないですね~」「そうですか」まぁそんなこともある。「すいません、バター餅をひとつ」実は餅があまり得意ではない俺だがお母さんに話しかけた手前、手ぶらで帰るわけにもいかず阿仁の名物を購入。まぁそんなこともある。

阿仁合駅前の人情酒場の馬刺しで一杯とは?

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阿仁合駅前にある居酒屋「平八」で今宵はひとり酒。店に入ると気さくなご夫婦が迎えてくれた。さっそくカウンターに座り、今日のメインイベントのスタートである。

 

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ちなみにこの店にメニューはなく、予算や希望を聞いて店主が料理を出してくれるお任せスタイルである。

 

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そしていよいよ事前にリクエストしていた好物の馬刺しの登場である。北秋田市阿仁地方で味わう至福のひととき。

「ああ、旨いっス」

思わず本音が溢れ出る。

「そうか。旨いか。へへへ。これは知ってるか? 馬のタテガミ」と店主のお父さん。

「タテガミ??」

 

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「これと馬刺しを一緒に食べてみ」

「一緒に?」

おそるおそる馬刺しと一緒にこの白い物体を口に運んでみる。

「うまっ!」

「へへへ。旨いでしょ」

タテガミと聞くと馬の毛を想像するがその正体はどうやら馬の首部分のようである。そいつをお父さんに教わったとおりに赤身の肉と一緒に口へ運べば、全盛期の辻ちゃん加護ちゃん並みに相性が良い。

 

「麻雀はやるか?」

「まぁ多少は」

「おっ、そうか」

そう言ってお父さんはテレビを夕方のニュースからスカパーの麻雀番組に切り替えた。馬刺しをつまみつつ、隣で晩酌を始めたお父さんと一緒にキャバ嬢風のお姉ちゃんたちが雀卓を囲むマニアックな番組を眺める阿仁合ナイト。このご時世でなかなか人が来ないと嘆いていたお父さんだが、この日は店に常連さんが集まっていた。いつでも人が酒で楽しんでいる様子はいい。

 

お父さんお気に入りの麻雀番組が終了したため、テレビは小学生が習う問題を大人が答えるクイズ番組に切り替わった。店のお父さんお母さん常連さん、そして俺、全員総出で目の前のクイズに挑む酒飲みたちのちょっぴりクレイジーな夜。

 

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すっかり良い気分になったところで店を出て、まばゆくライトアップされた阿仁合駅へ。奇麗なイルミネーションとは裏腹に売店や食堂の電気が消えた駅の中はどこか寂しげだ。

 

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秋田の長い冬はもう少し続く。2月になるとそれまでの冬の疲れがどっとやってくるのは俺だけだろうか。だが確実に春の桜は近づいている。そんなことを思いながら帰りの内陸線。

電車はゆっくりと暗いトンネルを抜けた。帰りに酒場のお母さんからもらったノンアルビールを飲み、お父さんからもらったビスケットを食べながら、また明日。

 

さて、今回は大寒の阿仁エリアを歩きまわり、最後は例によって阿仁合駅前の人情酒場で酔っぱらったKANEYANの秋田ぶらり旅。今年もコロナと雪に翻弄される秋田の冬だが、次回はさらに内陸線を進んで、晩冬の「阿仁前田温泉駅」や「米内沢駅」を目指してみようか。

 

続く。