KANEYANの秋田ぶらり旅

KANEYANが秋田県内の各駅を回りながら綴るNONSTOP AKITA DIARY

#39【春旅】【JR北上線】「横手駅から巣郷温泉を目指す春の北上線各駅降車の旅」とは?

横手市民に愛されるもうひとつのソウルフード「焼肉ライス」とは?

北上線矢美津駅が消えた。

 

スプリング・ハズ・カム。長かった秋田の冬もいよいよ終わり、家の前に魔塔のようにそびえ立っていた雪の塊もいつの間にか消えた。すっかり春である。そして2年前の夏に唐突に始まった秋田県内全駅制覇の旅もいよいよ終盤戦だ。今回横手駅から秋田と岩手の県境にある巣郷温泉郷を目指すにあたり、俺はいつものようにYahoo!の路線情報で北上線の時刻を調べていた。だがなぜだか横手駅から一駅隣の「矢美津駅」までの運行情報が全く表示されないのである。

 

Yahoo!の路線情報から突如消えた矢美津駅。だが謎はすぐに解けた。2022年3月12日をもってJR北上線の「矢美津駅」と「平石駅」の2駅が利用客減少により廃止されていたのである。JR東日本で営業中の駅の廃止は6年ぶりのようだが、いつだってアイドルの卒業と無人駅の廃止はある日突然やってくる。ちなみに、さよならも言わずにいつの間にかいなくなった矢美津駅周辺をGoogleMapで見てみると、ポツンとラブホテルが見える。ラブ&トレイン。これからは愛を育む横手市の男女を北上線は速度を落とさずに素通りしていく。

 

そんなわけで今回は横手駅から廃止となった矢美津駅と平石駅を通過し3駅隣の黒沢駅、そして岩手との県境を越えて巣郷温泉郷を目指す旅である。俺は花粉症で充血した目をこすりながら今回の旅の出発地点である横手駅へと降り立った。

 

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北上線に乗る前に先ずは腹ごしらえである。横手といえば「横手焼きそば」や「十文字ラーメン」が有名だが、今回は趣向を変えて肉を食べよう。俺は横手駅から20分ほど歩き、お目当ての店へと向かった。

 

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横手の街並みに向かって堂々と掲げられた「焼肉ライス」の文字。もはや凄まじい熱意だ。俺はおそるおそる店内へと入った。

 

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店内に入ると感じの良いお母さんが迎えてくれた。ジャンプとマガジンが並ぶ少し年季の入った本棚の上にはおもむろに二刀流・大谷が映るテレビが置かれ、その隣には「迷った時には焼肉ライス」の張り紙が見える。ここまでプッシュされたら頼まないわけにはいかない。俺はお母さんに噂の焼肉ライスを注文した。

 

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焼肉ライス登場。このビジュアルはマジで食欲をそそられる。俺はまるで育ち盛りの中学生の如く目の前の飯にがっついた。最近はすっかり食が細くなった38歳のネクスト中年世代の俺もこいつを目の前にすると、いつでも腹ペコだった少年時代に戻りそうだ。脇役の漬物や少し焦げたスパゲティも良い味を醸し出している。そう、これだよ、これ。ひとり呟く横手の春だ。

昼どきを迎えると、地元の会社員と思われる人たちで店内は満員御礼。作業着を来た若いお兄さんも制服を着たお姉さんも、この店で思い思いの昼休みを過ごすのだろう。横手焼きそばだけじゃない横手のもうひとつのソウルフード。迷ったら焼肉ライスの言葉に偽りなしである。

■駅構内でカラオケも歌える北上線相野々駅とは?

腹がいっぱいになったところで、電車旅といこう。俺は横手駅から北上線に乗って、相野々駅へと向かった。

 

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立ち寄った際は残念ながら営業していなかったが、駅に隣接している「村さ来亭」は横手出身のシンガーソングライター高橋優の叔父さんが経営しているお店のようである。

 

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メルヘンティックな外観の相野々駅構内でふと上を見上げると、カラオケルームが見える。

 

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まさに歌える駅・相野々。……なんだけど誰かが利用している気配はなかった。コロナが落ち着いたら、地元の方々の歌合戦が繰り広げられることを期待したい。

 

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例の如く、次の電車がやってくるのは数時間後のため歩いて次の小松川駅へと向かう。

 

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途中、なんだか小憎らしい鉢巻をしたマスコットキャラクターが印象的な道の駅「さんないウッディらんど」でトイレ休憩をしつつ、小松川駅を目指す。

 

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相野々駅から1時間以上歩いただろうか、アラフォーおじさん(俺)の老化した足腰がいよいよ悲鳴をあげ始めたころ、ようやく小松川駅に到着した。

 

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もはや涙が出るぐらいスカスカすぎる時刻表には誰かが置いていった傘が挟まっていた。

 

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秋田の夜は早い。19時45分が終電って、都会のひとから見たらもはや都市伝説レベルだ。

 

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眩しい春の夕陽を浴びながら、ようやく本日の目的地である黒沢駅方面の電車がやってきた。いざ黒沢駅、そして巣郷温泉郷へ。もうまもなく陽が落ちる。さて、今日はどこの酒場で酒を飲もうか。

■平時は温泉も入れる巣郷温泉の人情食堂「でめきん食堂」とは?

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秋田と岩手の県境にある黒沢駅に到着。このエリアは県内トップクラスの豪雪地帯ということもあり、駅舎の中にはおもむろに除雪機が置かれていた。

 

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黒沢駅から歩くこと20分。岩手県西和賀町へ。本日はここ巣郷温泉郷で愛されるローカル食堂「でめきん食堂」で晩酌といこう。

 

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黒沢駅から歩くこと30分。国道107号線沿いにあるドライブイン・でめきん食堂は外観通りのザ・昭和の食堂である。厨房でお父さんが料理を作り、接客の担当はお母さんのようだ。丼もの、麺類、一品料理と一通り揃っているようだが、旅に出ると物珍しいものを食べてみたくなる。俺はいつものように瓶ビール、そして馬肉の味噌煮を注文した。

 

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豆腐がたっぷり入った馬肉の味噌煮を頬ばりながらスプリングビール。店内は俺の他に男性のお客さんがひとりラーメンを啜っている。漂う昭和ビートと溢れる実家のような安心感。ああ、これはついつい長居してしまうパターンだ。

 

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こういった昭和感強めの店に来ると日本酒が欲しくなってくる。お母さんにお願いすると店のカウンターに置いてあったワンカップの登場だ。男は黙って美酒爛漫。そしてこいつに合わせるのはおでんだ。

 

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古き良き食堂でワンカップを飲みながら、おでんをつまむ。ここまでくれば俺もかなりの上級者だ。だが久々に日本酒を飲み、さらに調子が上がってきた俺のもとにお母さんが申し訳なさそうにやってきた。

 

「すいません。実は7時半で終わりなんですよ」

「あっ。なるほど。すいませんです」

俄然調子が出てきた生粋の酒飲みもお母さんにタイムリミットを告げられては仕方がない。だがこのままでは夜中まで居座り飲んでいた可能性があったため、逆に良かったかもしれない。

「最後に何か召し上がりますか?」

「えっと、それでは中華そばをひとつ」

酒を飲んで最後はラーメンで〆る。生粋の酒飲みはいつでもこの王道パターンを崩さない。

 

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この絵にかいたような中華そばが、春の夜に染み渡る。ちなみにこの「でめきん食堂」にはここ巣郷温泉郷ならではのサービスがある。現在はコロナ禍で休止しているようだが平時は店で食事をすると、漏れなく店内にある温泉に無料で入浴できるのだ。じぇじぇじぇ。さすがはメジャーリーガー大谷を輩出した岩手県。優しい夫婦が営む昔ながらの昭和の食堂は、飯を食べれて風呂も入れる二刀流だ。

 

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ほろ酔い気分で本日の宿「静山荘」へ。黒沢駅から歩いてきたことを告げると「えっ、それなら車で迎えにいったのに!」と女将さん。とても気さくな方だ。

「部屋はこちらです。あと温泉は24時間入れますから」

お風呂はいつでも入れるのか。それはありがたい。

「あっ、でも」

「はい」

「朝のほうがいいかもしれないですね」

どうやら酔っているのがバレていたようだ。

 

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翌朝6時、朝風呂をしにお風呂場へ。

この時間だ、きっと貸し切りだなと思いきや先客のお父さんに大声で挨拶をされた。男たちの朝は早い。お父さんと並んで熱い湯船に体を浸からせながら、朝飯に思いを馳せる。俺はなぜか旅館で食べる朝飯が大好きなのだ。

 

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朝飯をモリモリ食べて、地元産の牛乳を飲み干す。最高の朝である。

だが大人のくせに時間の管理が著しく苦手な俺は、黒沢駅から横手駅へ向かう数少ない北上線の発車時刻が迫っていることをすっかり忘れていた。急いで旅館をチェックアウトして、小走りで駅まで向かう。調子に乗って朝から3杯も飯を食ってしまった俺はゲップが止まらない。

 

そしてそんな間抜けな俺に、春の日差しが煌々と降り注いでいた。

 

さて、今回は横手駅から巣郷温泉を目指したKANEYANの秋田ぶらり旅。秋田の駅全駅制覇のガチンコ旅も残るは田沢湖線(角館~田沢湖駅間)のみとなった。長いようで短かったKANEYANの秋田ぶらり旅。閲覧者数が伸びないようで、やっぱり伸びなかったKANEYANの秋田ぶらり旅。旅の終わりは名残惜しいが、次回はいよいよこの旅のフィーナーレに向かって角館駅から初夏の田沢湖線の旅に出てみようか。

 

続く。