KANEYANの秋田ぶらり旅

KANEYANが秋田県内の各駅を回りながら綴るNONSTOP AKITA DIARY

#16 【年末ひとり旅】【JR男鹿線】「今話題のなまはげに会いにゆく男鹿半島ぶらり旅」とは?

■映画で話題の「なまはげ」に会いにゆく

先月、秋田県男鹿半島を舞台にした仲野太賀主演の映画「泣く子はいねぇが」が公開された。この映画を通じて東北屈指の心霊スポット男鹿プリンスホテル……じゃなくて男鹿市の民俗行事である「なまはげ」に興味を持った人もいるのではないだろうか。

 

俺もそのひとりである。

 

実は同じ秋田県内でも男鹿市から離れた県南育ちの俺にとって、なまはげはあまり馴染みがない。なんとなく鬼の恰好をした村人が家々を回り子供を脅して泣かせるというイメージはあるが、これでは県外の人が持ってる知識とさほど変わらないと思われる。

ここはひとつ俺も秋田県民として「なまはげ」を経験しこのブログを通じて県内外の人たちに伝えたいところだが、男鹿市民でもない俺がふらっと男鹿に行ってなまはげに会えるとも思えない。そもそもなまはげは大晦日のローカル行事な上に、今年はコロナの影響で男鹿のほとんどの地区で行事の中止を余儀なくされているという。

なんだかハードルが高くなってきた。だがどうしてもなまはげに会ってみたい。そう思いネットで調べてみると「男鹿真山伝承館」という場所でなまはげ体験ができることを知った。これは行ってみる価値がありそうだ。

 

そんなわけで俺は今話題のなまはげに会うべく、再び男鹿線に乗車し前回訪問した船越駅の隣駅である「脇本駅」に降り立った。今回はここ脇本駅から男鹿駅、そして「なまはげ」を目指す旅である。

 

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前日の夜から積もった雪ですっかり冬景色である。脇本駅周辺は「寒風山」や「脇本城跡」が有名どころのようである。脇本城跡までは徒歩で片道30分。夏なら行けない距離ではないが、如何せん寒すぎる。俺は呆気なく寒風山及び脇本城跡行きを諦め、次の電車時間まで駅周辺を探索することにした。

 

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駅の周りを歩いていると、やたらと迫力ある看板が目についた。

 

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 ■惜しくも閉店した脇本の暮らしのデパート「三久」とは?

ドン・キホーテもビックリの豪快な看板を掲げたこの「三久」は明治時代から男鹿市脇本エリアの暮らしのデパートとして機能していたようだが、今年の秋に惜しくも閉店してしまったようだ。

 

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秋田には意外にも古くから続いている、いわゆる老舗と呼ばれる店が少ないように思う。国道沿いの大型ショッピングモールの影響で地域に根づいた「昭和の店」が衰退していく様子に一抹の寂しさを感じつつ、脇本駅から男鹿線に乗って隣の羽立駅へと向かった。

 

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男鹿駅のひとつ手前である羽立駅の駅舎はなぜかメルヘンチックである。正直このデザインのセンスはどうなんだろうというのは置いておいて、実は男鹿駅に行くよりも羽立駅のほうが主要観光スポットのアクセスが良いということもあり、観光客と思われる人も数名降車していた。俺は少し陽が差してきたこともあり隣の男鹿駅まで歩いてみることにした。

 

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■男鹿真山伝承館でなまはげを体験

ほどなくして男鹿駅に到着。男鹿駅は2年ほど前にリニューアルされたようで駅の中も小奇麗で観光案内所も併設されている。

 

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冬の期間はバスが走っていないため、男鹿駅からなまはげ体験ができる男鹿真山伝承館まで行く手段は乗合タクシーのみである。俺は男鹿水族館でデートをする若いカップルと一緒にタクシーに乗り込み伝承館に向かった。

 

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伝承館周辺はなかなか厳粛とした雰囲気である。ここでは実際になまはげ体験ができる「男鹿真山伝承館」となまはげの各資料を見て回れる「なまはげ館」が隣接している。さらに伝承館から少し歩いたところには「男鹿真山神社」がある。

 

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さっそく男鹿真山伝承館に向かうと、ちょうど実演会が始まるところであった。伝承館の中は古民家のような造りになっており田舎の雰囲気が再現されている。既に二組の先客が開演を待っていた。俺が畳に座ると開演の運びとなり、まず初めに行事についての簡単な説明がなされた。そしていよいよなまはげの登場である。

 

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ピシャン! ドスン! 形容する言葉に悩んでしまうが、とにかく小心者の俺はなまはげが障子を開ける音にマジでビビり叱られた子供のように肩をすくめた。なまはげは「泣く子はいねぇが」と怒鳴りながら、乱暴に家を探し回り、なぜか四股を踏む。なかなかの迫力である。小さい子供はガチで泣いてしまいそうだ。だがイメージとして悪いやつと誤解されがちな「なまはげ」だが、その正体は災いを払い豊作をもたらす来訪神である。そのため各家々ではなまはげに酒をつぎ丁寧にもてなすという。

ちなみに子供を泣かせているイメージの強いなまはげだが、子供に限らず怠け者の大人や親の面倒を見ないお嫁さんも懲らしめるようである。

 

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実演会後半では、実際になまはげがお客さんの目の前に来て「泣く子はいねぇが」と声を張り上げる。俺はオッサンなので「怠けでねぇが!」「真面目にやれよ!」と怒声を浴びせられた。ぶっちゃけ日常が怠惰と不真面目で出来ている俺は、この新感覚のパワハラは心に響くものがあった。

 

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なまはげの余韻に浸りつつも、まだ少し時間があったため伝承館の隣にある真山神社を参拝することにした。

 

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拝殿から更に奥に進むと五社殿があるのだが、なかなか急勾配な岩の階段を登らねばならない。入口に置いてあった杖を使いながら登った。

 

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ちなみに帰り道、雪で滑って派手に尻もちをついたのは内緒である。

 

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■ノスタルジーとシャレオツが交差する街・男鹿

無事になまはげ体験と真山神社での参拝を終えた俺は再びあいのりタクシーに乗り男鹿駅へと戻った。最後に男鹿のソウルフードでも堪能しようと駅周辺を歩いていると、ある店で足が止まった。

 

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古ぼけた「ファミリーレストラン」の看板がやけにノスタルジーを感じる。結論から言うと俺はここで生姜焼き定食を食った。せっかく男鹿半島に来たことだし当初は海の幸を食べようと思っていた。ぶっちゃけ海鮮丼が旨そうな店もあった。だが俺はノスタルジーに負けたのである。

 

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メニューには懐かしのお子様ランチ。もはや絶滅危惧種ファミリーレストランが男鹿に存在していた。

 

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甘辛いタレの厚めの豚肉に付け合せのサラダスパゲティ。真山神社で疲れた体にハイカロリーをぶち込む。もはや港町の雰囲気ゼロの昼飯で腹を満たしつつ、すこし男鹿駅の周りを探索してみることにした。

 

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駅からすこし歩くと「大龍寺」というお寺がある。現在は雪景色だが、 紅葉シーズンには鮮やかな庭園を眺めることができるようである。

 

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男鹿ではとにかく至る所に「泣く子はいねぇが」のポスターが貼られまくっていた。

 

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駅から10分ほど歩くと夜のお店エリアにたどり着く。

 

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一昨年、男鹿駅のリニューアルと道の駅「オガーレ」の誕生により、すっかり小綺麗な印象となった男鹿駅周辺だが、駅から少し離れると寂れた港町の雰囲気が顔を出す。

 

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駅の方に引き返すと、男鹿の街でひときわ異彩を放つ洒落た喫茶店を発見した。

 

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店内はさらにシャレオツである。ちなみに先ほど昼飯を食べた「ファミリーレストラン園」にほど近い場所にある。昭和と令和、ノスタルジーとシャレオツが交差する街・男鹿。なかなか侮れないものである。

 

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店内ではコーヒーの他にクラフトビールも楽しむことができるようだが、特筆すべきは店員さんの可愛さである。なまはげの里に突如現れたまるで下北沢のような空間を前になぜかやたらと気取ってしまい、今までの人生で一度も頼んだことのないシフォンケーキを注文してしまった。

慣れない手つきでシフォンケーキをこねくり回しつつ、この男鹿半島ぶらり旅もいよいよフィナーレである。

 

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さて、今年も残すところ、あとわずかである。世界的にも、個人的にも、いろいろあった1年である。来年に備えて、帰りの男鹿線で今年起きた数々の自分の不甲斐なさを反省していると、どこからともなく声が聞こえてきた。

 

「怠けでねぇが!」

「真面目にやれよ!」

 

そう、なまはげは子供だけじゃなく、大人にとっても頭の下がらぬ存在である。男鹿半島にやってきて俺はそんなことを知った。

 

さて、無事になまはげに会うことができたKANEYANの秋田ぶらり旅。未だなまはげの怒声が頭から離れない俺だが、ひとまずこの男鹿半島にて男鹿線に別れを告げて、次回は真冬のJR羽越本線の旅に出てみようか。

 

続く。