KANEYANの秋田ぶらり旅

KANEYANが秋田県内の各駅を回りながら綴るNONSTOP AKITA DIARY

#12 【歩き旅】【JR奥羽本線】「独り身の孤独なポエムを奏でながら恋文の街・二ツ井を目指す旅」とは?

■未来の嫁を探す旅

彼女がほしい。

 

考えてみたら俺はもう36歳である。同年代の人を思い浮かべてみよう。二十歳で子供ができた人は、もう既に高校生の子供がいることになる。マジかよ。怖い。同年代の人たちが子供の進路について真剣に考えているころ、俺はエロ自販機の場所を真剣に探している。怖い。震えるほど怖い。ちなみに俺は今実家暮らしである。36歳の実家暮らし。ご飯の用意や洗濯はすべて母親にやってもらっている。お母さん、ありがとう。だけど怖い。吐き気がしてくるほど怖い。むしろここ最近はおかんとしかまともに会話をしていない。怖い。涙が出るほど怖い。こんなはずではなかった。人生計画では遅くとも二十代の後半には結婚し、30歳には子供ができている予定だった。本来ならば今頃小学生になる娘と毎晩お風呂に入るのが楽しみの良きパパだったはずだ。……って、架空の娘とお風呂に入ることを想像している自分が何より怖い。

 

ダメだ。旅に出よう。自分探しの旅。……って、自分を探している場合じゃない。もうそんな年じゃないだろ。彼女を探そう。将来の嫁を探そう。もしかしたら旅先で出会いがあるかもしれないじゃないか。

 

俺は意気揚々とJR奥羽本線に乗り込んだ。今回は前回の旅で最後に立ち寄った森岳駅の隣駅である「北金岡駅」から4駅先の「二ツ井駅」への旅を算段した。元々このBLOGのテーマは「俺の知らない秋田を探す旅」だが、そこに「俺の知らない未来の嫁を探す旅」も加えることにしよう。そんなことを思いながら俺は今回の旅の出発点である「北金岡駅」に降り立った。

 

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北金岡駅に降りた瞬間、不意に鳥肌が立ったのは秋風が体に染みたからではない。とにかく人がいないのである。だがここで立ち止まっていても埒が明かない。ひとまず俺は次の「東能代駅」を目指して歩いてみることにした。

 

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だが歩けども、歩けども、人と出会わない。それどころかコンビニも飲食店もある気配がない。あるのはお墓ぐらいである。

 

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歩いている人はいないのに、お墓はたくさんある。もはやここはあの世なのだろうか。

 

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黙々と歩いていると、あるものを発見した。エロ本である。

 

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雨に濡れたエロ本をチラ見する。激カワJKクライマックス。なかなか熱いタイトルだぜ。いやいや、繰り返すが俺は36歳である。道に落ちているエロ本をチラ見して許されるのは20年前までだ。怖い。自分が怖い。そんな俺をパトカーがいぶかしげに追い越してゆく。危うく捕まるところだった。

 

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人はいないのに、熊は出るようである。マッチングアプリで近くに住む可愛い女の子と出会う確率よりも、街を歩いていて冬眠前の腹を空かせた熊とマッチングして食い殺される確率のほうがはるかに高い。これが秋田クオリティである。

 

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歩き進めていると、ようやく病院で人を見かけた。人が集まる場所といえば病院。これが秋田クオリティである。と、ひととおり秋田をディスりながら、東能代駅に到着した。

 

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 ■人形道祖神鶴形金比羅宮、そして再び出会った大人の秘密基地「おもしろ館」とは?

以前はここ東能代駅から五能線で北に向かって旅をしたが、今回は奥羽本線で東に向かい二ツ井方面を目指す。先ずは東能代駅で切符を買い、隣駅の「鶴形駅」へと向かった。

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なかなか年季が入った駅舎だが「鶴寿会」という地元のボランティアグループが清掃を行っているようである。ここからはまた徒歩で次の富根駅を目指すことにしたのだが、途中で謎の人形と目が合った。

 

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もはや良いやつなのか悪いやつなのか判別がつかないルックスであるが、後から調べたところ人形道祖神と言い、いわゆる地域の守り神のようである。そのへんの子供が作った工作を不法投棄しているわけではないようだ。ここ能代市鶴形ではこういった人形が街中に数体存在しているようである。

 

さらに歩き進めていると「鶴形金比羅宮」の看板を発見した。考えてみると今回の旅において全く観光スポットらしいものを見ていない。見たものと言えば道に落ちていたエロ本ぐらいである。ここはひとつ観光スポットのひとつでも紹介せねば格好がつかない。

 

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小さく「きけん」と記された看板が、やたらに恐怖感を植え付ける。完全に熊登場スポットである。しかも神社までの道のりは急勾配なオフロード。命懸けの参拝である。

 

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冬目前の11月だが汗をかきながら何とか階段を登りきる。帰り道に熊と出会わぬよう祈りつつ、また道を引き返す。観光名所の紹介も楽ではない。

 

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国道に出て、次の「富根駅」を目指して歩いているとまたもやあいつと出会った。そう俺の青春の象徴・エロ自販機である。

 

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中に入ってみると、エロ本やエロDVDのパッケージが散乱していた。まったく。これでは鶴形駅を清掃してくれている「鶴寿会」もプンプンである。……と思いつつも、落ちているDVDのパッケージを拾ってみる。って、エロ自販機の隅に落ちているDVDを拾う36歳はもはや懲役レベルだ。

 

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 ■地元民に愛されるオール500円の食堂「かあちゃん」とは?

そそくさとエロ自販機「おもしろ館」を後にして、再び国道を歩き始めた。もうお昼の12時を回っている。そろそろ昼飯と行きたい。スマホで調べてみたところ、ちょうど富根駅付近に1軒だけ食堂があるようだ。

 

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ここ「かあちゃん」はその名の通り高齢のお母さんがひとりで切り盛りしている地元の人気店で全てのメニューがなかなかのボリュームでオール500円と安い。俺はハンバーグ定食を注文した。ちなみにこの店の名物は超ボリューミーなから揚げ定食のようである。

 

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ハンバーグに目玉焼きが二つのり、その上にソース。そしててんこ盛りのご飯。不味いわけがない。そろそろ糖質を控えねばならない年ではあるが、育ち盛りの中学生のようにご飯をかきこむ。旨い。これで500円である。平日ではあったが次々とお客さんはやってくる。能代郊外の地元民に愛されて、今日もかあちゃんは飯を作る。俺たちのために。

 

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満腹になったところで、富根駅から再び奥羽本線に乗り本日の目的地である二ツ井駅へと向かった。

 

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ここ能代市二ツ井町は以前「きみまち恋文全国コンテスト」なるイベントを行っていたようで、その名残なのか駅前の商店街を歩いているとやたらと「ハート」が目立つ。

 

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ご休憩にどうぞ。だがけしてラブホテルではない。

 

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駅から少し歩くと「きみまち阪公園」という観光スポットがあるようだが、秋田の観光スポットのしょうもなさは前回の旅で森岳温泉郷の「カッパの足湯」が証明している。しかもこれから天気予報は雨模様である。俺は観光スポットに向かう者とは思えない重い足取りできみまち阪公園を目指した。

 

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 ■恋のパワースポット「恋文ポスト」と「恋文神社」とは?

前述のとおり「きみまち阪公園」については正直あまり期待していなかったのだが、森岳温泉のカッパの足湯とは比較にならないほど、なかなか立派な公園だった。残念ながらコロナの影響で「きみ恋カフェ」という休憩所こそ営業していなかったが、投函するとハート型の消印が押される「恋文ポスト」や恋のパワースポット「恋文神社」などなかなか見どころのある公園である。

 

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公園を散歩をしながら俺はふとこんな妄想をした。

 

俺は今公園を歩いている。隣には今年結婚したばかりの妻。新垣結衣に似ている。

「紅葉、きれいだね」

結衣は言った。

「そうだね」

俺は最近飼い始めたばかりのトイプードルのリードを持ちながらそう返した。

「あら、可愛いワンちゃんね」

散歩をしていた地元のおばちゃんが声をかけてくる。

トイプードルはそんなおばちゃんを無視して木陰に隠れてウンチをし始めた。

俺は「本当に困ったやつなんですよ。誰に似たんだか」と言いながら苦笑いを浮かべた。「きっとあなたね」結衣はそう言って笑った。

 

ああ、寂しい。いつかこんな日が来るだろうか。俺は恋文神社の前で、願いをこめた。

 

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旅先で出会いがあるかもしれない。俺はそんなことを思っていた。だが俺は今日女性と出会うどころか富根駅の食堂のお母さんとしか会話をしていない。

 

「どこかにいいひといないかな……」

 

俺は恋文神社に向かって小さくつぶやいた。

そして冷たい秋の風に吹かれながら、奮発して50円玉を賽銭箱に投げ入れた。

 

さて、独り身の孤独なポエムを奏でながら進んでいくKANEYANの秋田ぶらり旅。旅をするよりもあきた結婚支援センターに行ったほうが賢明な気もするが、ひとまず恋文の街に別れを告げて、次回はさらに奥羽本線を進んで鷹ノ巣方面に向かってみようか。

 

続く。