KANEYANの秋田ぶらり旅

KANEYANが秋田県内の各駅を回りながら綴るNONSTOP AKITA DIARY

#19 【健康祈願】【JR羽越本線】「不治の病も完治する折渡峠の超絶パワースポットを目指す旅」とは?

由利本荘市の折渡峠を目指す旅

今、世界はコロナ禍により未曽有の危機的状況にある。

 

コロナに限らず癌や脳梗塞や糖尿病など我々はいつだって病気と隣り合わせだ。健康に気を使い毎朝ジョギングをし欠かさず青汁を飲んでいるひとだってある日突然病魔に襲われるかもしれない。ならば運動など疲れることは一切せず、たらふく酒を飲み毎晩気絶するように寝ている俺など、いつ病気になり死んでしまってもおかしくはない。

 

だがそんな病魔を恐れ、病魔を忌み嫌い、病魔と闘い続ける我々現代人にとって朗報がある。なんと秋田県由利本荘市の折渡峠という場所に、訪れれば世の中のどんな病気も治ってしまうというトンデモナイ霊場が存在するという。

ある人は不治と言われた肝臓癌が3日で治り、ある人は半身不随の脳梗塞が治り、ある人はイボ痔が治ったという、まさに超絶パワースポットである。

 

……って、ぶっちゃけ怪しすぎるが取り急ぎその謎めいた霊場をこの目で確認するため俺は再び羽越本線に乗り込んだ。

先ずは前回最後に訪れた「岩城みなと駅」の隣駅である「羽後亀田駅」から今回の旅はスタートである。

 

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岩城みなと駅」は近くに大きな道の駅もあり多少は人の気配が感じられたが、ここ「羽後亀田駅」付近は人の気配がなく、曇り空の天気と相まって仄暗い雰囲気である。

ひとまず俺は数キロ先の由利本荘市の観光名所のひとつ「天鷺村」まで歩いてみることにした。駅前から路線バスも走っているようだが、次のバス到着時刻まであまりにも時間が長いのである。

 

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30分ほど歩いただろうか。民家が立ち並ぶ通りを超えると大きなお城が見えてきた。天鷺城である。

 

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天鷺城と同じ敷地内には、当時の民家を再現した建物や資料館が並ぶ「天鷺村」も併設されており、観光客向けのちょっとしたテーマパークとなっている。

 

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これからおそらく過酷と思われる「折渡峠」を攻略するため、まずは天鷺城の売店近くにあった食堂で腹ごしらえをすることにした。衣川うどんである。

 

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この「衣川うどん」は由利本荘市内で飼育されている鴨肉が使われており、ここ天鷺村の名物のようである。少し離れた席では地元民と思われるお父さんが新聞を読みながら呑気にラーメンを啜っていた。

羽越本線2つ目の忘れられた駅「折渡駅」とは?

腹が膨れたところで、天鷺城を後にして次の「折渡駅」を目指すことにした。引き続き空は曇っているが、これから晴天に向かう予報である。お昼を過ぎて気温も上がってきた。

 

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折渡駅方面に向かって歩き進めるに従って徐々に車通りは少なくなり、人の気配も消えてしまった。おまけに道幅狭く歩道にはまだ雪が残っている。

不穏な空気を感じつつも歩いていると、まるで俺の行く手を阻むかのように全く除雪されていない真っ白な雪道が現れた。

 

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試しに一歩を踏み出してみる。俺の短い足はかなり奥深く、ふくらはぎぐらいまで埋まってしまった。諦めて引き返すか。だがここから少し歩いて県道に出ればまもなく駅にたどり着くはずだ。自問自答の後、俺は意を決してこの雪深いオフロードを歩くことにした。

 

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「ズボッ、ズボッ」

 

これはいったい何の修行だろうか。雪に足を取られてズッコケた。そんな俺を人間はもちろん小動物すら笑ってくれない物静かな雪道をひたすら歩いた。幸い県道まで出るとほとんど雪は消えていた。

 

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折渡駅に到着。山々に囲まれた、のどかすぎる駅である。待合室のベンチに座って、ひと休み。駅周辺に数件民家が並んでいるが、ただただ静かで人の気配はない。

 

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この駅はほとんどの電車が通過してしまうため、時刻表はスカスカ。桂根駅に続く羽越本線二つ目の「忘れられた駅」である。

 

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駅に設置されているポットン便所で用を足して、いよいよ今回のメインイベントである不治の病も完治するという謎のパワースポット「岩城修弘霊園場」を目指して折渡峠へと足を踏み入れた。

ちなみに折渡峠は例の霊場の他に千体のお地蔵様が並ぶ「折渡千体地蔵」が観光名所のひとつに挙げられているようである。

 

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延々に続く山道を登っていく。車もほとんど通らない。

 

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しばらく山道を登り続けていると、峠の片隅についに例の霊場の看板が現れた。

 

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風化してボロボロな看板に早くも異様な雰囲気が漂っている。

 

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■不治の病も完治する超絶パワースポット「岩城修弘霊園場」とは?

よくわからないけど、なんかすごそうだ。その独特な雰囲気に俺はそう心の中で呟くしかなかった。

入口の看板には「この霊場は今病気で苦しんでいる貴方様を治そう 救おうと言うのが目的です」と記されており、至って大真面である。そして心より信ずる者はどんな病気でも即座に(今すぐにでも)必ず助けてくれる、らしい。その圧倒的自信に導かれるように俺はその霊場に足を踏み入れた。

 

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雪道を登っていくと、そこに広がっていたのは圧倒的な荘厳さと胡散臭さに囲まれたパラレルワールドである。

 

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霊園内はキテレツな装飾に数々の格言が並んでいた。要約すると「とにかく病は気からだ、信じてれば病気なんて治っちまうぜっ!」という感じだろうか。現代医学も尻尾を巻いて逃げ出しそうな圧倒的な力技である。

 

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この霊園の偉大な観音様の力により、県内外の方のあらゆる病気が治っちまったようである。

 

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この霊場の偉大な観音様のパワーで癌も不眠症も五十肩も治っちまったようである。そう、信じるか信じないかは俺と貴方次第である。そして心より信ずる者のどんな病気をも今すぐに必ず助けてくれる。それが岩城修弘霊園場である。

 

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塩分を摂りたいだけ摂り、糖分を摂りたいだけ摂り、タバコを無理してやめるのもよしましょう。健康志向の現代に鋭いメスを入れる格言に軽く洗脳されつつ俺は霊園を後にして、折渡峠を更に進んだ。

 

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ほどなくして「折渡延命地蔵尊」に到着。ここにはあちらこちらから寄贈された千体とも言われるお地蔵さんが並んでいる。

 

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折渡延命地蔵尊の向かい側には無料の休憩所が設置されていた。申し訳程度のお土産なども販売しているが、その正体は地元のお母さんたちの語らいの場の様子である。

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こんな真冬にここまで歩いてくる命知らずがよほど珍しいのか、お母さんたちは再び歩いて山を下っていく俺をいぶかしげな顔で見ていた。

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殺風景な山道を今度はひたすら下っていく。そんな俺に冬の風が容赦なく吹きつける。普段ほとんど運動をしていない俺のナイーブな足腰がいよいよ悲鳴を上げ始めたころ、ようやく集落が見えてきた。

 

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ついに折渡峠を歩ききった俺はガス欠寸前の体を引きずり、そのまま羽後岩谷駅へと向かった。羽後岩谷駅に隣接している「道の駅おおうち」で温泉に入って名物の「とろろ飯」でも食べようかとも思ったが、今日はもう少し足を延ばし羽越本線で「羽後本荘駅」まで向かうことにした。

 

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由利本荘の密かなソウルフード「本荘ハムフライバーガー」とは?

俺は今回の旅の終わりにどうしても食べてみたいものがあった。それはここ由利本荘エリアのご当地グルメ「本荘ハムフライ」である。何を隠そう俺はハムフライが好物なのだ。駅前を探索してみると、ハムフライに対しての街の意気込みがにわかに伝わってくる。

 

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ここ羽後本荘駅付近では何件かハムフライを食べられる店があるようだが、俺は駅から少し歩いたところにある渋い食堂に狙いを定め意気揚々と向かった。

だが残念ながらその店は休業日であった。

 

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もはや完全に「ハムフライ」の口になっている俺は夕方の羽後本荘駅を彷徨った。ふらふら歩いていると「24時間 パンコーナー」という看板が目に留まった。建物の中を覗いてみると、そこにはパンの自動販売機が設置されていた。

 

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さまざまなパンに紛れて「本荘ハムフライバーガー」なるものを発見。とにかく腹ペコだった俺は建物の中に置いてあった椅子に腰かけ噂のソウルフードにかぶりついた。

 

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ハムフライバーガーをムシャムシャ食べていると、数人の男子高校生が自動販売機の前にやってきた。彼らはどのパンを購入するかひとしきり仲間内で思案した後、椅子が置いてある方向に目を向けた。するとそこに映ったのは汗臭いジャージを履き靴は泥だらけの小さなオジサンである。食いかけの本荘名物を手に持ったまるでコジキのようなそのオジサンを彼らは目て見ぬふりをして帰っていくのだった。

 

その翌日、秋田は再び冬の寒波に襲われまた雪が積もった。俺は酷い筋肉痛を抱えながら雪かきをしていた。とにかく体の節々が痛いのである。

そう、さすがの「岩城修弘霊園場」も小さなオジサンの筋肉痛についてはその効果を発揮しなかった模様である。

 

さて、今回はガイドブックには絶対に載らないカオスな霊園場を訪れたKANEYANの秋田ぶらり旅。何はともあれ今後の健康を祈りつつそのパワースポットに別れを告げて、次回はさらに羽越本線を先に進んで旨い魚の宝庫である仁賀保・象潟方面を目指してみようか。

 

続く。