KANEYANの秋田ぶらり旅

KANEYANが秋田県内の各駅を回りながら綴るNONSTOP AKITA DIARY

#19 【健康祈願】【JR羽越本線】「不治の病も完治する折渡峠の超絶パワースポットを目指す旅」とは?

由利本荘市の折渡峠を目指す旅

今、世界はコロナ禍により未曽有の危機的状況にある。

 

コロナに限らず癌や脳梗塞や糖尿病など我々はいつだって病気と隣り合わせだ。健康に気を使い毎朝ジョギングをし欠かさず青汁を飲んでいるひとだってある日突然病魔に襲われるかもしれない。ならば運動など疲れることは一切せず、たらふく酒を飲み毎晩気絶するように寝ている俺など、いつ病気になり死んでしまってもおかしくはない。

 

だがそんな病魔を恐れ、病魔を忌み嫌い、病魔と闘い続ける我々現代人にとって朗報がある。なんと秋田県由利本荘市の折渡峠という場所に、訪れれば世の中のどんな病気も治ってしまうというトンデモナイ霊場が存在するという。

ある人は不治と言われた肝臓癌が3日で治り、ある人は半身不随の脳梗塞が治り、ある人はイボ痔が治ったという、まさに超絶パワースポットである。

 

……って、ぶっちゃけ怪しすぎるが取り急ぎその謎めいた霊場をこの目で確認するため俺は再び羽越本線に乗り込んだ。

先ずは前回最後に訪れた「岩城みなと駅」の隣駅である「羽後亀田駅」から今回の旅はスタートである。

 

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岩城みなと駅」は近くに大きな道の駅もあり多少は人の気配が感じられたが、ここ「羽後亀田駅」付近は人の気配がなく、曇り空の天気と相まって仄暗い雰囲気である。

ひとまず俺は数キロ先の由利本荘市の観光名所のひとつ「天鷺村」まで歩いてみることにした。駅前から路線バスも走っているようだが、次のバス到着時刻まであまりにも時間が長いのである。

 

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30分ほど歩いただろうか。民家が立ち並ぶ通りを超えると大きなお城が見えてきた。天鷺城である。

 

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天鷺城と同じ敷地内には、当時の民家を再現した建物や資料館が並ぶ「天鷺村」も併設されており、観光客向けのちょっとしたテーマパークとなっている。

 

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これからおそらく過酷と思われる「折渡峠」を攻略するため、まずは天鷺城の売店近くにあった食堂で腹ごしらえをすることにした。衣川うどんである。

 

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この「衣川うどん」は由利本荘市内で飼育されている鴨肉が使われており、ここ天鷺村の名物のようである。少し離れた席では地元民と思われるお父さんが新聞を読みながら呑気にラーメンを啜っていた。

羽越本線2つ目の忘れられた駅「折渡駅」とは?

腹が膨れたところで、天鷺城を後にして次の「折渡駅」を目指すことにした。引き続き空は曇っているが、これから晴天に向かう予報である。お昼を過ぎて気温も上がってきた。

 

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折渡駅方面に向かって歩き進めるに従って徐々に車通りは少なくなり、人の気配も消えてしまった。おまけに道幅狭く歩道にはまだ雪が残っている。

不穏な空気を感じつつも歩いていると、まるで俺の行く手を阻むかのように全く除雪されていない真っ白な雪道が現れた。

 

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試しに一歩を踏み出してみる。俺の短い足はかなり奥深く、ふくらはぎぐらいまで埋まってしまった。諦めて引き返すか。だがここから少し歩いて県道に出ればまもなく駅にたどり着くはずだ。自問自答の後、俺は意を決してこの雪深いオフロードを歩くことにした。

 

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「ズボッ、ズボッ」

 

これはいったい何の修行だろうか。雪に足を取られてズッコケた。そんな俺を人間はもちろん小動物すら笑ってくれない物静かな雪道をひたすら歩いた。幸い県道まで出るとほとんど雪は消えていた。

 

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折渡駅に到着。山々に囲まれた、のどかすぎる駅である。待合室のベンチに座って、ひと休み。駅周辺に数件民家が並んでいるが、ただただ静かで人の気配はない。

 

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この駅はほとんどの電車が通過してしまうため、時刻表はスカスカ。桂根駅に続く羽越本線二つ目の「忘れられた駅」である。

 

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駅に設置されているポットン便所で用を足して、いよいよ今回のメインイベントである不治の病も完治するという謎のパワースポット「岩城修弘霊園場」を目指して折渡峠へと足を踏み入れた。

ちなみに折渡峠は例の霊場の他に千体のお地蔵様が並ぶ「折渡千体地蔵」が観光名所のひとつに挙げられているようである。

 

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延々に続く山道を登っていく。車もほとんど通らない。

 

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しばらく山道を登り続けていると、峠の片隅についに例の霊場の看板が現れた。

 

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風化してボロボロな看板に早くも異様な雰囲気が漂っている。

 

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■不治の病も完治する超絶パワースポット「岩城修弘霊園場」とは?

よくわからないけど、なんかすごそうだ。その独特な雰囲気に俺はそう心の中で呟くしかなかった。

入口の看板には「この霊場は今病気で苦しんでいる貴方様を治そう 救おうと言うのが目的です」と記されており、至って大真面である。そして心より信ずる者はどんな病気でも即座に(今すぐにでも)必ず助けてくれる、らしい。その圧倒的自信に導かれるように俺はその霊場に足を踏み入れた。

 

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雪道を登っていくと、そこに広がっていたのは圧倒的な荘厳さと胡散臭さに囲まれたパラレルワールドである。

 

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霊園内はキテレツな装飾に数々の格言が並んでいた。要約すると「とにかく病は気からだ、信じてれば病気なんて治っちまうぜっ!」という感じだろうか。現代医学も尻尾を巻いて逃げ出しそうな圧倒的な力技である。

 

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この霊園の偉大な観音様の力により、県内外の方のあらゆる病気が治っちまったようである。

 

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この霊場の偉大な観音様のパワーで癌も不眠症も五十肩も治っちまったようである。そう、信じるか信じないかは俺と貴方次第である。そして心より信ずる者のどんな病気をも今すぐに必ず助けてくれる。それが岩城修弘霊園場である。

 

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塩分を摂りたいだけ摂り、糖分を摂りたいだけ摂り、タバコを無理してやめるのもよしましょう。健康志向の現代に鋭いメスを入れる格言に軽く洗脳されつつ俺は霊園を後にして、折渡峠を更に進んだ。

 

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ほどなくして「折渡延命地蔵尊」に到着。ここにはあちらこちらから寄贈された千体とも言われるお地蔵さんが並んでいる。

 

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折渡延命地蔵尊の向かい側には無料の休憩所が設置されていた。申し訳程度のお土産なども販売しているが、その正体は地元のお母さんたちの語らいの場の様子である。

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こんな真冬にここまで歩いてくる命知らずがよほど珍しいのか、お母さんたちは再び歩いて山を下っていく俺をいぶかしげな顔で見ていた。

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殺風景な山道を今度はひたすら下っていく。そんな俺に冬の風が容赦なく吹きつける。普段ほとんど運動をしていない俺のナイーブな足腰がいよいよ悲鳴を上げ始めたころ、ようやく集落が見えてきた。

 

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ついに折渡峠を歩ききった俺はガス欠寸前の体を引きずり、そのまま羽後岩谷駅へと向かった。羽後岩谷駅に隣接している「道の駅おおうち」で温泉に入って名物の「とろろ飯」でも食べようかとも思ったが、今日はもう少し足を延ばし羽越本線で「羽後本荘駅」まで向かうことにした。

 

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由利本荘の密かなソウルフード「本荘ハムフライバーガー」とは?

俺は今回の旅の終わりにどうしても食べてみたいものがあった。それはここ由利本荘エリアのご当地グルメ「本荘ハムフライ」である。何を隠そう俺はハムフライが好物なのだ。駅前を探索してみると、ハムフライに対しての街の意気込みがにわかに伝わってくる。

 

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ここ羽後本荘駅付近では何件かハムフライを食べられる店があるようだが、俺は駅から少し歩いたところにある渋い食堂に狙いを定め意気揚々と向かった。

だが残念ながらその店は休業日であった。

 

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もはや完全に「ハムフライ」の口になっている俺は夕方の羽後本荘駅を彷徨った。ふらふら歩いていると「24時間 パンコーナー」という看板が目に留まった。建物の中を覗いてみると、そこにはパンの自動販売機が設置されていた。

 

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さまざまなパンに紛れて「本荘ハムフライバーガー」なるものを発見。とにかく腹ペコだった俺は建物の中に置いてあった椅子に腰かけ噂のソウルフードにかぶりついた。

 

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ハムフライバーガーをムシャムシャ食べていると、数人の男子高校生が自動販売機の前にやってきた。彼らはどのパンを購入するかひとしきり仲間内で思案した後、椅子が置いてある方向に目を向けた。するとそこに映ったのは汗臭いジャージを履き靴は泥だらけの小さなオジサンである。食いかけの本荘名物を手に持ったまるでコジキのようなそのオジサンを彼らは目て見ぬふりをして帰っていくのだった。

 

その翌日、秋田は再び冬の寒波に襲われまた雪が積もった。俺は酷い筋肉痛を抱えながら雪かきをしていた。とにかく体の節々が痛いのである。

そう、さすがの「岩城修弘霊園場」も小さなオジサンの筋肉痛についてはその効果を発揮しなかった模様である。

 

さて、今回はガイドブックには絶対に載らないカオスな霊園場を訪れたKANEYANの秋田ぶらり旅。何はともあれ今後の健康を祈りつつそのパワースポットに別れを告げて、次回はさらに羽越本線を先に進んで旨い魚の宝庫である仁賀保・象潟方面を目指してみようか。

 

続く。

#18【廃墟探訪】【JR羽越本線】「平成を駆け抜けて廃墟と化した由利本荘の巨大レジャーランドを目指す旅」とは?

■廃墟と化した由利本荘市の巨大レジャーランドを目指す旅

駆け抜けて平成。

 

俺は昭和後期の1984年生まれである。そのため昭和から平成に年号が変わった1989年当時、俺はピチピチの5歳だった。平成に入りまもなく小学生になった俺はその後中学生になり高校生になり大学生になり東京へ出てそしてまた地元の秋田に戻ってきたのだが、これは全て平成時代の出来事である。そう、平成の歴史はいわば俺の歴史でもあるのだ。

 

そんな俺と同じく昭和後期に開園し、ちびっ子たちの夢と希望を乗せて平成を20年以上走り続け、やがて2010年(平成22年)にその役割を終え閉園し、令和となった現在は広大な廃墟として一部マニアに愛されている東北屈指の巨大レジャーランドが秋田県由利本荘市に存在している。

由利本荘市と言えば元乃木坂46生駒里奈さんの出身地でもある。3度の飯より「ぐるぐるカーテン」が好きな俺としては、生駒ちゃんもきっと幼少期に訪れたであろうその巨大レジャーランドの現在の姿を是非ともこの目で確かめておきたいところである。

 

そんなわけで俺はさっそく乃木坂46の名盤「透明な色」をiPhoneからイヤホンに流し羽越本線に乗り込んだ。先ずは前回訪れた羽後牛島駅の隣駅である「新屋駅」からこの旅はスタートである。

 

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秋田市新屋にある昭和40年創業の渋い食堂とは?

廃墟と化した海辺の巨大レジャーランド(通称:道川のプール)はここ新屋駅から3駅先の「道川駅」が最寄である。俺はひとまずここ新屋駅付近の探索から始めることにした。

 

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国道7号線に出て次の「桂根駅」を目指して歩いていると、道路沿いになかなか渋い外観の食堂を発見した。暖簾には「創業昭和40年」と記載されている。俺の大先輩である。まだ昼前ではあったが俺はその店に吸い込まれた。

 

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まだ午前11時前にも関わらず道路を挟んで反対側の駐車場には大型のトラックを始め数台の車が既に並んでいる。なかなかの人気店のようである。店内に入るとお母さんが元気よく迎えてくれた。

 

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新屋ダンディがホルモンをつまみながら超絶大盛りの白飯を豪快に口へ運んでいる。どうやらこの店のメインは「ホルモン」のようである。数あるメニューの中から俺はホルモンラーメンを注文した。

 

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ラーメンに濃厚なホルモンをぶっこんだ新屋のソウルフードを啜る。平日にも関わらず客足は絶えない。昭和から平成、そして令和へと時が流れても、秋田市新屋の「舘の丸食堂」は引き続き地元民やトラックの運転手などに愛され続けているようだ。

 

腹が膨れたところで、再び国道に出て「桂根駅」を目指して歩き進めていると突如ラブホテルの検索サイトの看板が現れた。

 

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そのド派手な看板を掲げた掘っ立て小屋に近づいてみると、その正体はこの旅で何度か遭遇している「おもしろ館」であった。そう、俺の青春の象徴・エロ自販機である。

 

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平成初期の雰囲気が漂う目がキラキラで心なしかパイオツ大き目のお姉さんが指さすその場所は言わずもがな大人のパノラマだが、自販機に貼られた小さなポスターには「令和新年号記念 DVD価格値下げ1枚2,000円から」の文字が見える。値下げして2,000円が高いか安いかはこの際置いておいて、この大人の秘密基地も一応令和仕様となっている模様である。

 

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さらに歩いていると、今度は先ほどよりもさらに大きなラブホテルの検索サイトの看板が国道を走るドライバーを煽っている。そして道路を挟んでその向かい側には恥じることなく派手なラブホテルが仁王立ちしている。とんだエロ街道のお目見えである。

 

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恥を恐れずまるでドラクエに出てくるお城のようなその外観まで歩いていくと、掃除をしていた年配のお母さんに「お客さん?」と声をかけられた。へどもどしていると、間髪入れずに「ここは満室だよ」とお母さん。「あっ、そうでしたか。ハハハ」と苦笑いして逃げるようにその場を後にした。ちなみに訪れたのは平日の真昼間である。秋田市民の秘密の情事の大半はこの場所で行われているのだろうか。

 

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■ほとんどの電車が通り過ぎるプチ秘境駅桂根駅」とは?

ほどなくして「桂根駅」に到着。実はこの駅は電車で訪問するのが困難なプチ秘境駅である。場所自体は車通りの多い国道付近にあり近くには民家やデイリーヤマザキもあるのだが、とにかくこの駅に停車する電車の本数が少ないのである。

 

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完全に地元の学生の為だけに存在しうる駅のようである。

 

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この大半の電車が通過してしまう「忘れられた駅」を後にして、また国道を歩き進める。国道のすぐ右手には日本海が流れている。冬の海の匂いを感じながら次の「下浜駅」を目指す。

 

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この付近は秋田戊辰戦争の跡地のようで、国道から逸れて数百メートルほど歩くと小高い丘の上に戦場碑も建てられていた。

 

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さらに下浜駅方面に歩き進めると、下浜海水浴場にたどり着いた。冬の海ほど侘しいものはない。天気が良く陽が差しているのが救いである。

 

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下浜駅に到着。近くに海水浴場があるため、以前はそのお客さんで駅も賑わっていたようだが今は無人駅である。

 

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ちょうど羽越本線が到着するタイミングだったため、ここからは電車に乗り例の巨大廃墟の最寄り駅である「道川駅」へと向かった。

 

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ちなみにここ道川駅は「由利本荘市」に位置する。冒頭でも述べたが生駒ちゃんの故郷である。幸いこの日は天気が良く、特にここ由利本荘市は積雪が少ないようで歩道の雪もほとんど溶けている。俺はイヤホンから乃木坂46の「おいでシャンプー」を流し息を弾ませつつ目的地の巨大レジャーランドを目指した。

 

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 ■東北屈指の巨大廃墟スポットで見た光景とは?

道川駅から歩くこと20分。広大な海をバックに全長120メートルとも言われる「アドベンチャースライダー」がついにその姿を現した。

 

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特大のアドベンチャースライダーを横目にさらに廃墟通りを進んでいくと、秋田国際ホテル跡にたどり着いた。

 

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入り口付近にはなぜか消火器がぶん投げられている。夜に訪れた日には大人でもちびりそうな惨状である。

 

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この時点で既にお腹いっぱいではあるが、いよいよレジャーランドの本丸へと侵入していく。周りは草木と雪に覆われており、異様に静かである。心霊スポットではないが、さまざまな怨念が渦巻いているように感じる。

 

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もはや窒息死寸前でこの巨大ダンジョンを探索していると、どこかで足音が聞こえた、ような気がした。俺は一瞬狼狽し、もう一度耳を澄ましてみる。今度はガサコソと音が聞こえた、ような気がした。ただの風の音だろうか。まさか幽霊ってこともあるまい。だけどゾンビの一匹ぐらい出てきそうな雰囲気ではある。いずれにしても長居は禁物。ここは早く脱出した方が良いかもしれない。そう考えた俺は逃げるように再び出口へと向かった。

 

「どひゃっ!」

 

思わず声を出してしまった。そこには若い男の子が立っていた。ゾンビか。いや、違う。眼鏡をかけたおとなしそうな男の子である。彼は俺には目をくれず一心不乱にこの廃墟を自慢のカメラで写真に収めていた。一部廃墟マニアにとってこの場所は絶好の観光名所のようである。

 

平成初期の1990年代、ここ「秋田厚生年金休暇センター」は通称「道川のプール」として親しまれ、東北屈指のアドベンチャーワールドとして英華を放っていたようである。栄枯盛衰。あの夏の日ちびっ子たちの夢と希望を乗せていたアドベンチャースライダーは斜陽に照らされていた。

 

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廃墟と夕焼けを後にして俺は「岩城みなと駅」へと向かった。岩城みなと駅付近には「道の駅いわき」があり、そこには温泉施設も備えられている。最後にこの廃墟訪問の旅で疲弊した体を熱いお湯で癒そうという魂胆である。

 

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駅から歩くこと5分で道の駅に到着。夕方ということもあり温泉施設「港の湯」は地元の常連さんと思われるお父さんお母さんたちで混雑していた。

 

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「港の湯」の大浴場の窓からは海が見えた。海に沈んでゆく夕日を眺める。悪くない景色である。

熱いお湯に浸かりながら、ふと考えた。俺も子供のころ、大仙市から父や母に連れられて先ほどのレジャーランドに来たことがあったのではないか。もしかしたらあったかもしれない。だけど覚えていない。そんなものである。

 

風呂からあがり再び外に出ると夕日は沈み、あたりは夕闇に包まれていた。やたら歩いたので腹が減った。

夏には子供たちの声がこだましたであろう、あのレジャーランドの400円のビーフカレーはどんな味がしたのだろうか。

 

さて、今回は東北屈指の廃墟スポットを訪れたKANEYANの秋田ぶらり旅。ひとまず廃墟探訪はこれぐらいにして、次回はさらに羽越本線を進んで折渡峠にある謎のパワースポットを目指してみようか。

 

続く。

 

#17 【町飲み】【JR羽越本線】「極上の酒とDEEPな出会いを求めて彷徨う秋田駅から羽後牛島駅へのはしご酒の旅」とは?

秋田駅から羽後牛島駅へのはしご酒の旅

また飲み過ぎた。

 

20代の頃はどんなにひどい二日酔いに遭遇しようとも夕方にはケロっとしてまた酒場に向かったものだが、先日37歳の誕生日を迎えすっかり中年の域に達した今は昼を超え夕方を超え夜になっても具合が悪い。

今日はほどほどにしよう。二日酔いが怖い俺はそう自分に言い聞かせ酒を飲み始めるのだが、気づけば泥酔している。こんな失敗を俺は何十回、いや何百回と繰り返してきた。それでも俺は酒が好きなのである。そしてさらに言うと酒を取り囲む人々についてもまた好きなのである。

 

完全に酒飲みの言い訳である。

 

それはさておき、秋田は大雪に見舞われた。

ごっそり降り積もった雪に家の玄関をふさがれ、車の運転で神経をすり減らし、日々の雪かきで腰を痛める。

 

ぜんぶ雪のせいだ。

 

それでもここ数日の晴天により、わずかではあるが秋田にも春に向かう兆しが見えてきた。秋田県民の皆さん、お疲れ様です。ここはひとつ一刻も早い春の訪れを願い秋田の酒場で乾杯しようじゃないか。

 

完全に酒飲みの言い訳である。

 

冒頭にも書いたように俺はまた飲み過ぎたのであるが、その反省を抱えつつここからは先日敢行した秋田駅から羽後牛島駅へのはしご酒の旅の一部始終を記していきたいと思う。まずは先日までの大雪からようやく解放された秋田駅からスタートである。

 

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■秋田の日本酒の聖地「永楽食堂」とは?

まず一件目に訪れたのは秋田駅から徒歩5分ほどのところにある「永楽食堂」である。

 

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店内に入るとその活気に驚かされた。まだ夕方5時過ぎにも関わらず店内はほぼ満席で秋田の呑兵衛たちが幸せそうに酒を酌み交わしている。

そこにはコロナ禍における荒んだ空気は微塵も感じない。秋田の酒場も捨てたもんじゃないな。根っからの酒場好きの畜生はひとりで納得しつつ、また同時にお通しの湯豆腐と肉しゃぶをつまみつつ、さてどの酒を頼もうかと周りを見渡す。とにかく酒の種類が豊富である。

 

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俺は秋田屈指の酒蔵である新政の「NO.6」の飲み比べ3種セットを注文した。「NO.6」はグレード別に「R-type」「S-type」「X-type」とに分かれているのだが店員のお姉さんが目の前にボトルを順番に並べてくれた。この心遣いが嬉しい。目の前に鮮やかなラベルが並ぶ。その凛とした姿は秋田の日本酒界の「横綱」である。

 

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「NO.6」を飲んでいく。ちなみに俺は酒の味を言葉で表現するのが苦手だが果たしてどうだろうか。とにかく飲みやすい。いかにもありふれた陳腐な表現である。とにかく上品だ。これもどこかで聞いた。X-typeは芸能人で言ったら叶姉妹(お姉さん)である。もはや意味がわからない。俺は右往左往しながら、あっという間に3種のNo.6を飲み干した。

 

ちなみに俺はS-typeが好みである。X-typeほどのゴージャスさはないものの、適度な甘さと酸味が心地よい。何より味に品があり飲み飽きしない。そう、S-typeは芸能人で言ったら叶姉妹(美香さん)である。

 

俺はS-typeをもっきりで注文し、肴は鯵のなめろうを合わせた。

 

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さて酒も肴も申し分ない「永楽食堂」だがもうひとつ「店員さん」について書き加えたい。まず店のお姉さんたちがとにかく可愛いのである。俺はカウンターで飲んでいたのでテレビの相撲中継やメニューの張り紙を見るふりをして彼女たちを盗み見ることができたのだが、下手なガールズバーよりも愛想よく手際もいい。そしてそんな彼女たちを司る女将さんも素敵な方である。

帰り際、勘定の際に女将さんに「気に入ったお酒はありました?」と聞かれたので「No.6のS-type」と答えたら最後に小さなグラスでS-typeをサービスしてくれた。今までいろんな酒場に通ってきたがこんなことは初めてである。酒好きの畜生はその心遣いに感動した。

 

まだまだ「永楽食堂」を堪能したいところだが、次に向かおう。俺は名残惜しさを感じつつ秋田駅から羽越本線に乗り「羽後牛島駅」へと向かった。

羽後牛島の呑兵衛が集う「丸の内食堂」とは?

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羽後牛島駅」は秋田駅の隣駅にも関わらず、ひっそりとしていた。駅付近は暗く歩道にはまだ雪が残っていた。俺はゆっくりとその雪も踏みしめながら次の酒場へと向かった。

 

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歩くこと15分。住宅街にポツンと立っている酒場にたどり着いた。

 

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営業中という小さな札こそ確認できるが、店内の様子はわからない。酒飲みはほろ酔い気分でも初めて行く酒場についてはわずかに緊張する生き物である。恐る恐る店の扉を開くと従業員のお姉さんが愛想よく迎えてくれた。

 

座敷では常連さんが盛り上がっている。雪の猛威がひと段落したことで遅れた新年会と慰労会であろうか。皆、上機嫌に酔っている。俺はカウンターに座り瓶ビールからまた始めることにした。

 

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好物のやまかけをビールで流し込む。隣では年配のお父さんが半分居眠りしながら焼酎を飲んでいる。永楽食堂のような割れんばかりの活気こそないものの、2軒目でゆっくりと飲むにはこういったお店が俺は好きである。

 

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さてつまみをもう一品。どうやらこの店のおススメは肉鍋のようである。お姉さんに「ひとりで食べるには量がありますか」と聞いてみた。

「けっこう量はあります。私はペロッといっちゃいますけどね」とお姉さん。

「なるほど」と言いつつ一旦保留である。生粋の酒飲みは自分の酒の許容量については過大評価している節があるが、自分の胃袋においてはそれほど自信がないものである。

 

俺は肉鍋を断念し、厚揚げ焼きを頼んだ。厚揚げ焼きもまた好物なのである。

 

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厚揚げ焼きを頬張りつつ夜が更ける。気づけば手元のビールは焼酎に変わり、時刻も夜9時半を回っている。おかしい。さっきまで相撲中継を見ていたはずだが。電車に乗っている時間もあったが、かれこれ4時間以上飲んでいる。生粋の酒飲みはたまに時計が高速回転しているのではないかと錯覚するときがある。

 

夜10時で閉店ということで俺は少々危なっかしい体を引きずりつつ丸の内食堂を退散し、再び雪道に躍り出て最後にとある店へと向かった。

秋田市郊外の秘密の社交場「パブやすらぎ息子」とは?

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アルコールの力で多少気は大きくなっているが、その扉を前にして一瞬俺はたじろいでしまった。店内からは誰かが歌っている堺正章の「さらば恋人」が聞こえてくる。俺は意を決してその扉を開いた。

 

「あら、いらっしゃい」

性別が定かではない店主(ソラちゃんと言うらしい)が「初めまして、よね?」と俺の耳元で囁いた。

「そ、そうですね」

緊張気味の俺に隣のカウンターで飲んでいた俺と同い年ぐらいの男性二人組が「一緒に飲みましょう」と声をかけてくれた。俺はビールを飲みながら周りを見渡した。

店内は常連客と思われる方々を中心にカラオケ合戦が繰り広げられており、そのたびソラちゃんが店の真ん中で激しく踊り、時にはマイクで美声をこだまさせている。

 

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「さあ歌って」

ソラちゃんがカラオケのリモコンを俺に手渡してくれた。

「か、カラオケは……」

 

俺はカラオケが苦手なのである。今までカラオケで70点以上を出したことがない。

 

「真ん中で歌うと気持ちいいわよ」

「そ、そうですかね」

 

恥ずかしながらここから俺の記憶が曖昧である。覚えている限りで書いていくが、この後俺は水のようにビールを飲み干し、2回か3回ほどそれをおかわりし根性を身につけた後ミスチルの「終わりなき旅」を熱唱した。

 

「いぎをぎらしでさぁぁぁ かげぬげだみっちをぉぉぉ」

 

それはさしずめ映画「ボーイズ・オン・ザ・ラン」の峯田和伸演じる田西が岡村孝子の「夢をあきらめないで」を熱唱したときのような塩梅で、「歌う」というよりもはや「がなる」というのが正しい形容で、俺は店のセンターに勢いよく飛び出し目を見開きシャウトしたのである。百戦錬磨の常連さんもさすがに唖然とする中、目の前にいたマッチョなお兄さんが「やるねえ」と言って笑ってくれたことは覚えている。

 

深夜0時。ソラちゃんが最後まで俺の帰りを心配してくれた。

「大丈夫っす」

大丈夫であろうとそうでなかろうと酒飲みはだいたい皆こう返す。そして店の外まで出て見送ってくれたソラちゃんに「また来ます」と言って手を振り歩き出した矢先、雪に滑って派手に転んだ。

 

そして翌朝は例の二日酔いである。そんなボロ雑巾のような俺とは対照的に外はまぶしいぐらいの晴天だった。

 

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雪に苦しめられた秋田の冬に差し込んだ光。東京にいたときは空が晴れて嬉しいと思うことなんてなかったな、と思った。

 

さて、今年も始まったKANEYANの秋田ぶらり旅。人生何百回目かの酒の飲み過ぎを反省しつつ秋田の個性的な酒場たちに別れを告げて、次回は羽越本線をさらに進んでみようか。

 

続く。

#16 【年末ひとり旅】【JR男鹿線】「今話題のなまはげに会いにゆく男鹿半島ぶらり旅」とは?

■映画で話題の「なまはげ」に会いにゆく

先月、秋田県男鹿半島を舞台にした仲野太賀主演の映画「泣く子はいねぇが」が公開された。この映画を通じて東北屈指の心霊スポット男鹿プリンスホテル……じゃなくて男鹿市の民俗行事である「なまはげ」に興味を持った人もいるのではないだろうか。

 

俺もそのひとりである。

 

実は同じ秋田県内でも男鹿市から離れた県南育ちの俺にとって、なまはげはあまり馴染みがない。なんとなく鬼の恰好をした村人が家々を回り子供を脅して泣かせるというイメージはあるが、これでは県外の人が持ってる知識とさほど変わらないと思われる。

ここはひとつ俺も秋田県民として「なまはげ」を経験しこのブログを通じて県内外の人たちに伝えたいところだが、男鹿市民でもない俺がふらっと男鹿に行ってなまはげに会えるとも思えない。そもそもなまはげは大晦日のローカル行事な上に、今年はコロナの影響で男鹿のほとんどの地区で行事の中止を余儀なくされているという。

なんだかハードルが高くなってきた。だがどうしてもなまはげに会ってみたい。そう思いネットで調べてみると「男鹿真山伝承館」という場所でなまはげ体験ができることを知った。これは行ってみる価値がありそうだ。

 

そんなわけで俺は今話題のなまはげに会うべく、再び男鹿線に乗車し前回訪問した船越駅の隣駅である「脇本駅」に降り立った。今回はここ脇本駅から男鹿駅、そして「なまはげ」を目指す旅である。

 

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前日の夜から積もった雪ですっかり冬景色である。脇本駅周辺は「寒風山」や「脇本城跡」が有名どころのようである。脇本城跡までは徒歩で片道30分。夏なら行けない距離ではないが、如何せん寒すぎる。俺は呆気なく寒風山及び脇本城跡行きを諦め、次の電車時間まで駅周辺を探索することにした。

 

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駅の周りを歩いていると、やたらと迫力ある看板が目についた。

 

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 ■惜しくも閉店した脇本の暮らしのデパート「三久」とは?

ドン・キホーテもビックリの豪快な看板を掲げたこの「三久」は明治時代から男鹿市脇本エリアの暮らしのデパートとして機能していたようだが、今年の秋に惜しくも閉店してしまったようだ。

 

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秋田には意外にも古くから続いている、いわゆる老舗と呼ばれる店が少ないように思う。国道沿いの大型ショッピングモールの影響で地域に根づいた「昭和の店」が衰退していく様子に一抹の寂しさを感じつつ、脇本駅から男鹿線に乗って隣の羽立駅へと向かった。

 

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男鹿駅のひとつ手前である羽立駅の駅舎はなぜかメルヘンチックである。正直このデザインのセンスはどうなんだろうというのは置いておいて、実は男鹿駅に行くよりも羽立駅のほうが主要観光スポットのアクセスが良いということもあり、観光客と思われる人も数名降車していた。俺は少し陽が差してきたこともあり隣の男鹿駅まで歩いてみることにした。

 

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■男鹿真山伝承館でなまはげを体験

ほどなくして男鹿駅に到着。男鹿駅は2年ほど前にリニューアルされたようで駅の中も小奇麗で観光案内所も併設されている。

 

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冬の期間はバスが走っていないため、男鹿駅からなまはげ体験ができる男鹿真山伝承館まで行く手段は乗合タクシーのみである。俺は男鹿水族館でデートをする若いカップルと一緒にタクシーに乗り込み伝承館に向かった。

 

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伝承館周辺はなかなか厳粛とした雰囲気である。ここでは実際になまはげ体験ができる「男鹿真山伝承館」となまはげの各資料を見て回れる「なまはげ館」が隣接している。さらに伝承館から少し歩いたところには「男鹿真山神社」がある。

 

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さっそく男鹿真山伝承館に向かうと、ちょうど実演会が始まるところであった。伝承館の中は古民家のような造りになっており田舎の雰囲気が再現されている。既に二組の先客が開演を待っていた。俺が畳に座ると開演の運びとなり、まず初めに行事についての簡単な説明がなされた。そしていよいよなまはげの登場である。

 

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ピシャン! ドスン! 形容する言葉に悩んでしまうが、とにかく小心者の俺はなまはげが障子を開ける音にマジでビビり叱られた子供のように肩をすくめた。なまはげは「泣く子はいねぇが」と怒鳴りながら、乱暴に家を探し回り、なぜか四股を踏む。なかなかの迫力である。小さい子供はガチで泣いてしまいそうだ。だがイメージとして悪いやつと誤解されがちな「なまはげ」だが、その正体は災いを払い豊作をもたらす来訪神である。そのため各家々ではなまはげに酒をつぎ丁寧にもてなすという。

ちなみに子供を泣かせているイメージの強いなまはげだが、子供に限らず怠け者の大人や親の面倒を見ないお嫁さんも懲らしめるようである。

 

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実演会後半では、実際になまはげがお客さんの目の前に来て「泣く子はいねぇが」と声を張り上げる。俺はオッサンなので「怠けでねぇが!」「真面目にやれよ!」と怒声を浴びせられた。ぶっちゃけ日常が怠惰と不真面目で出来ている俺は、この新感覚のパワハラは心に響くものがあった。

 

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なまはげの余韻に浸りつつも、まだ少し時間があったため伝承館の隣にある真山神社を参拝することにした。

 

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拝殿から更に奥に進むと五社殿があるのだが、なかなか急勾配な岩の階段を登らねばならない。入口に置いてあった杖を使いながら登った。

 

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ちなみに帰り道、雪で滑って派手に尻もちをついたのは内緒である。

 

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■ノスタルジーとシャレオツが交差する街・男鹿

無事になまはげ体験と真山神社での参拝を終えた俺は再びあいのりタクシーに乗り男鹿駅へと戻った。最後に男鹿のソウルフードでも堪能しようと駅周辺を歩いていると、ある店で足が止まった。

 

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古ぼけた「ファミリーレストラン」の看板がやけにノスタルジーを感じる。結論から言うと俺はここで生姜焼き定食を食った。せっかく男鹿半島に来たことだし当初は海の幸を食べようと思っていた。ぶっちゃけ海鮮丼が旨そうな店もあった。だが俺はノスタルジーに負けたのである。

 

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メニューには懐かしのお子様ランチ。もはや絶滅危惧種ファミリーレストランが男鹿に存在していた。

 

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甘辛いタレの厚めの豚肉に付け合せのサラダスパゲティ。真山神社で疲れた体にハイカロリーをぶち込む。もはや港町の雰囲気ゼロの昼飯で腹を満たしつつ、すこし男鹿駅の周りを探索してみることにした。

 

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駅からすこし歩くと「大龍寺」というお寺がある。現在は雪景色だが、 紅葉シーズンには鮮やかな庭園を眺めることができるようである。

 

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男鹿ではとにかく至る所に「泣く子はいねぇが」のポスターが貼られまくっていた。

 

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駅から10分ほど歩くと夜のお店エリアにたどり着く。

 

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一昨年、男鹿駅のリニューアルと道の駅「オガーレ」の誕生により、すっかり小綺麗な印象となった男鹿駅周辺だが、駅から少し離れると寂れた港町の雰囲気が顔を出す。

 

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駅の方に引き返すと、男鹿の街でひときわ異彩を放つ洒落た喫茶店を発見した。

 

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店内はさらにシャレオツである。ちなみに先ほど昼飯を食べた「ファミリーレストラン園」にほど近い場所にある。昭和と令和、ノスタルジーとシャレオツが交差する街・男鹿。なかなか侮れないものである。

 

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店内ではコーヒーの他にクラフトビールも楽しむことができるようだが、特筆すべきは店員さんの可愛さである。なまはげの里に突如現れたまるで下北沢のような空間を前になぜかやたらと気取ってしまい、今までの人生で一度も頼んだことのないシフォンケーキを注文してしまった。

慣れない手つきでシフォンケーキをこねくり回しつつ、この男鹿半島ぶらり旅もいよいよフィナーレである。

 

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さて、今年も残すところ、あとわずかである。世界的にも、個人的にも、いろいろあった1年である。来年に備えて、帰りの男鹿線で今年起きた数々の自分の不甲斐なさを反省していると、どこからともなく声が聞こえてきた。

 

「怠けでねぇが!」

「真面目にやれよ!」

 

そう、なまはげは子供だけじゃなく、大人にとっても頭の下がらぬ存在である。男鹿半島にやってきて俺はそんなことを知った。

 

さて、無事になまはげに会うことができたKANEYANの秋田ぶらり旅。未だなまはげの怒声が頭から離れない俺だが、ひとまずこの男鹿半島にて男鹿線に別れを告げて、次回は真冬のJR羽越本線の旅に出てみようか。

 

続く。

#15 【クリぼっちの旅】【JR男鹿線】「海と酒と雪の男鹿線クリスマスひとり旅」とは?

■冬の男鹿線クリスマスひとり旅

「朝早ぐがらどさいぐ?(朝早くからどこに行くの?)」

67歳の母親が俺に言う。

「いやちょっと」

歯切れの悪い口調でそう返すと俺は家を出た。12月25日。クリスマスの朝である。前日のクリスマスイヴは「イオン大曲店」で買ったピザとケーキを母親とふたりで食べた。ケーキはもちろんホールサイズではない。クリスマス仕様ではあるが小さな丸いケーキである。母親はそれを食べる前にシニア用のスマホで写真を撮っていた。誰に見せるのだろうか。ちなみに母親がスマホのカメラ機能を使ったのは2年半前に秋田市の「大森山動物園」に行って以来である。

 

こんな時代だ。ひとまず母親が健康であればそれでいい。だけど子供が寝たのを見計らってクリスマスプレゼントをこっそり靴下に忍ばせる。そんな良きパパになる夢は12月にしてはあまりにも多すぎる雪と一緒にどこかに埋もれてしまった。

 

「ケーキなんぼした?(ケーキいくらだった?」

「500円ちょっと」

「あやっ、意外とだげな(えっ、意外と高いね)」

 

母親とそんな会話をしてクリスマスイブ終了。風呂に入ろうと思い靴下を脱いだら穴が空いていた。俺にはもうサンタさんはやってこない。

 

どこかへ。ここではないどこかへ行きたい。

 

12月25日。そう思った俺は秋田駅で出戸浜駅までの切符を購入した。330円。一杯の牛丼クラスの小さな不要不急の旅である。俺は男鹿線クリスマスひとり旅を存分に味わうことを決意し、先ずは今回の出発点であるJR男鹿線・出戸浜駅に降り立った。

 

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この「出戸浜駅」は潟上市に位置するが、早くもなまはげのイラストが出迎えてくれた。秋田駅からそう遠くはないが、無人駅で駅周りに人はいない。華奢で迫力に欠けるなまはげのイラストだけが、ここから4駅先の「船越駅」を目指すこのクリぼっちの旅の始まりを見守ってくれている。

 

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 ■出戸浜の冬の海とたべもの屋「笑ごころ」のごちそう飯とは?

スマホでどこか観光スポットはないか探してみる。少し歩くと海に出るようだ。むしろ海しかない。俺はひとまず海を目指して歩くことにした。

 

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15分ほど歩くと海が見えてきた。冬の海。もう何年も前の話だが12月に友人と一緒に鎌倉に遊びに行って七里ヶ浜の海に飛び込んだことを思い出した。死ぬほど寒かったけど死ぬほど楽しかった。だがそんな青春の思い出は出戸浜海水浴場の荒れた海が容赦なくさらっていった。ひとりで訪れた冬の海は死ぬほど侘しかった。

 

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来年の夏はコロナが終息しこの海に人が集まることを願いつつその場を後にして国道に出た。この12月、秋田では県南エリアを中心に記録的な豪雪に襲われたが、この日は天気が良く道路には雪もない。コロナの感染者よりも天気予報の雪マークに血眼になっていた秋田県民にようやく訪れた安堵である。

 

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潟上市は国道沿いにある道の駅「天王グリーンランド」が有名スポットだが、今回は国道からすこし外れたところにある「たべもの屋 笑ごころ」で昼飯を食べることにした。

 

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昼時だったためか、店内は常連さんで賑わっている。てんぷら定食をオーダーして待っていると、お母さんが次々と小鉢を運んできてくれた。あっという間にテーブルは一杯である。

 

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俺は豪勢な飯を目の当たりにするとなぜか気恥ずかしい気持ちになる。牛丼と豚汁あたりが性に合っているのである。だがクリスマスに食べたごちそう飯は格別であった。帰り際、お母さんがご飯の量は少なくなかったか気を使ってくれたが、36歳のオッサン予備軍の俺の腹は十分に膨れ上がっていた。

■船越駅前の食堂にて湯豆腐で一杯

満腹のお腹をさすりながら「上二田駅」まで歩いた。正直冬の徒歩旅は無謀かと半ば諦めていたが今日の天気であれば歩けそうである。この調子で本日の目的地である「船越駅」までたどり着き、酒と旨い肴でこっそりとクリスマスを祝いたい。

 

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ちょうど電車が到着するタイミングだったため上二田駅から再び男鹿線に乗り隣の二田駅に向かった。今さらながら、この「KANEYANの秋田ぶらり旅」は「全ての駅に一度は立ち寄る」というマイルールを設けている。

 

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天気は悪くないが、さすがに寒い。二田駅近くにコーヒーでも飲める喫茶店はないか探してみたが、全くなかった。仕方がないので次の天王駅を目指して歩くことにした。

 

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このあたりから徐々に雪がちらつき始めた。そして何より港町特有の風が冷たい。これが吹雪に変わればひとたまりもない。すぐにタクシーをつかまえて最寄り駅に引き返し旅は中止である。気まぐれな秋田の冬の空模様を気にしながら、天王駅までたどり着いた。

 

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天王駅周辺は東湖八坂神社がある程度で、やはり寂しい印象である。ちなみに天王駅から少し歩くと大野書店というエロ本と宝くじを購入できる本屋があるようだが、そこで2年前「サマージャンボ宝くじ」の一等5億円が出たという噂をネットニュースで見た。まさに男鹿ドリーム。人生一発逆転のストーリーがまさかこの場所から生まれようとは、さすがのなまはげもビックリである。

 

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本日の目的地である「船越駅」に着いたころには、既に日の入りを迎えていた。ちなみに船越駅は男鹿市の入口に位置する。ついになまはげの里である男鹿に来たわけだが日中に比べるとかなり寒い。ひとまず駅前の食堂に駆け込んで熱燗を頼んだ。

 

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湯豆腐をつまみながら熱燗をすする。周りのお客さんはホルモンを食べている。名物なのだろうか。気取ったところがない良い店である。クリスマスの晩飯。そこにはチキンもケーキもない。だがそれでいいのだ。男は黙って豆腐と酒である。

■船越の呑兵衛御用達の〆ラーとは?

店を出ると雪が積もっていた。わずか1時間ほどの滞在中にすっかり雪景色となった街並みにまるで浦島太郎のような気分である。既に日本酒をやってほろ酔い気分の俺は転ばないように千鳥足で次の店を目指して歩く。せっかく港町に来たのである。刺身を食いたい。たどり着いた「きりん亭」はこのあたりでは有名店のようである。広い座敷にあぐらをかいて座る。秋田にあって東京に無いもの。そんなものは何もないと思っていたが、ひとつだけあった。居酒屋で容易にあぐらをかけることである。

 

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平目刺しを食べながら、ビールをすする。これが俺にとってのメリークリスマスである。店内に設置されている大型のテレビからは「ミュージックステーションスーパーライブ」が流れている。年末である。

だいぶ酔いも回ってきたが、最後にもう1軒。どうしてもラーメンが食べたい。ここ船越には呑兵衛御用達の〆ラーメンが食べられる店があるようである。たらふく食べて飲んで最後にラーメン。36歳のクリスマスひとり旅はやたらと体に悪そうである。

 

外に出ると、日中の晴天が嘘のように雪交じりの風が酔っぱらった俺の頬を容赦なくぶん殴ってきた。もはや吹雪である。酒と雪にまみれて、何とか〆のラーメンを目指して歩いた。男は好きな女と飲んだ後のラーメンにおいては常に貪欲でなければならない。

 

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船越駅から5分ほど歩くとスナックが連なる夜の街エリアがある。今回最後に訪問したその店も外観は完全にスナックである。「さくらん」という名前のラーメン屋など聞いたことがない。おそるおそる扉を開けて店内に入ってみる。カウンターに座ってひとまずお姉さんにレモンサワーを注文。暗めの店内はやはり夜のお店の雰囲気だが、その正体はやはりラーメン屋さんのようである。だがメニューを見ると酒もつまみも充実している。俺が好きなタイプの店である。

 

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ラーメンを食べに来たつもりが、気づくとまた飲んでいる。俺の悪い癖である。レモンサワーに男鹿エリアの密かなソウルフードである「なんこつのたたき」を合わせる。

 

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テレビは再びMステ。ToshIがMISIAの「Everything」を歌っていた。結局レモンサワーをおかわりして、長居してしまった。途中で頼んだ馬刺しは冷凍していたようでガリガリ君ぐらい冷たかったが、ラーメンは文句なしに旨かった。

 

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店を出ると、先ほどの強風は落ち着いたが深々と雪が降っていた。冬の男鹿の天気はどうやら気まぐれのようである。ついつい食べ過ぎた自分の腹をさすりつつ、ついつい飲み過ぎた今日の自分を反省して歩く帰り道。

せめて転ばないようにと、気をつけながら歩いた。

 

さて、冬の海を眺め酒を飲み最後は雪に見舞われたKANEYANの秋田ぶらり旅。今年も生産性の無いクリスマスを過ごした俺だが、次回はさらに男鹿線を進んで、今話題の「なまはげ」と会うべく男鹿線の終着駅「男鹿駅」を目指してみようか。

 

 続く。

 

#14【秘境駅探訪】【JR奥羽本線】「秘境駅・津軽湯の沢駅を目指す晩秋の奥羽本線各駅停車の旅」とは?

■秋田と青森の県境にある秘境駅を目指す旅

誰もいないところに行きてえな。

 

俺はときどきそんなことを思う。

 

仕事でしくじった夜、ベッドに寝転がって「いろいろめんどくせえな。ちょっとだけ誰もいないところに行きてえな」なんて考える。だけどすべてを投げ出す勇気はない。少しだけ誰もいないところに行って、少しだけ頭を空っぽにしたい。 そんなことを考える夜が俺にはある。

 

誰も人がいない場所。自由がある場所。あっ、あとついでに翌日の仕事のことも考えて出来れば日帰りで帰ってこれる場所。そんな俺たち"なんにもないところに行きてえな症候群"の人種にとって打ってつけの場所がある。

 

秘境駅である。

 

そう今回目指すのは、周りに何もない駅として一部マニアで有名な東北屈指の秘境駅・JR奥羽本線の「津軽湯の沢駅」である。ちなみに津軽湯の沢駅は冬季間(12月から3月まで)は通過駅となるため、どうしても11月中に向かわねばならない。俺は急いで旅支度を整えてJR奥羽本線に乗り込んだ。

 

今回は前回訪れた鷹ノ巣駅の隣駅「糠沢駅」から6駅先の「津軽湯の沢駅」までの奥羽本線各駅停車の旅を計画した。厳密には「津軽湯の沢駅」は青森県の駅だが秋田の県境に位置するため、この奥羽本線編(大舘・青森方面行き)の最終目的地に選んでみた。

 

まずは陽が昇って間もない早朝の糠沢駅からスタートである。 

 

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津軽湯の沢駅まで行かなくとも、もはやこの時点で何もない。俺は早くも糠沢駅で途方に暮れつつ、ひとまず待合室で次の電車を待つことにした。

この糠沢駅の駅舎は地元の民族芸能である綴子(つづれこ)大太鼓をモチーフにしており、そのユニークなデザインを見に遠方からも人が訪れるようである。駅の待合室には奥羽本線・そして糠沢駅の思い出作りにと旅ノートが設置されていた。

 

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俺はそっとノートを閉じて、学生に混ざって奥羽本線に乗り、次の早口駅を目指した。

 

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ナニコレ珍百景にも登場した早口の珍スポットとは?

ここ早口駅から少し歩くと「弁慶」という早朝から営業しているラーメン屋さんがある。その奇妙な外観からテレビ朝日系列「ナニコレ珍百景」にも登場したここ大舘市早口エリアの珍スポットのようだが、次の電車までまだ時間があったため向かってみることにした。

 

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国道に出ると、思わず訪問者を後ずさりさせる独特なオーラを放った建物を発見。恐る恐る近づいてみる。

 

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やっちまった。まさかの定休日。それにしても噂通りのなかなかパンチのあるルックスである。こうなるとラーメンの味がとても気になるが、定休日ではどうにもならない。早朝ラーメンはあきらめて、大館市特有のノスタルジックな建物をチラ見しながら、駅へと戻った。

 

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早口駅に戻って、再び奥羽本線に乗車。隣駅の「下川沿駅」に向かった。

 

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駅前のプロレタリア文学の小説家・小林多喜二先生のお墓を参拝しつつ、近くに飲食店はないか探してみたが午前中から営業している店はなかった。仕方がないので俺は駅の待合室のベンチに腰を下ろした。そんな俺を駅前にいた警備員さんがいぶかしげに見ている。先を急ごう。俺はまた奥羽本線に乗って大舘駅を経由して白沢駅で降車した。

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 ■またまた出会った大人のワンダーランドとは?

次の電車までかなり時間があるため、歩きながら次の「陣場駅」を目指しつつ、その途中に食堂があればそこで腹ごしらえする作戦を算段した。だが歩けども歩けども食堂はおろかコンビニすらない。ようやく見つけたドライブインは既に廃墟と化していた。

 

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もはや大舘エリアは廃墟しかないのか。チクショー腹減ったぜ。半ばヤケクソで国道を歩いていると、何やら怪しい看板を発見。

 

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国道7号線沿いに不意に現れた大人のワンダーランド。忠犬ハチ公の故郷・大舘市が下腹部を膨らませてお届けする秘密の観光スポット。ハチ公もまさか大量の廃車に混ざってこんな場所が隠されていたことを知ったら、ひとまずご主人のことは忘れて発情してしまうだろう。

 

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俺は周囲を確認しながら、その秘密の建物の中に侵入した。そこには強固な鉄格子の奥に大人の秘密映像と秘密道具が隠されている。値段はだいたい2000円ほど。優しい価格設定である。既に絶滅危惧種と思われたエロ自販機を見つけたのは、この「KANEYANの秋田ぶらり旅」において早くも3つ目である。さすが伝説のセクシー女優・森下くるみさんとゴールドフィンガー加藤鷹氏を輩出したエロの国・秋田である。

 

ついつい、エロ自販機についてはテンションが上がり文字数が増えてしまうが、今日は朝から飲まず食わずということを忘れていた。オラ、腹減ったぞ。名残惜しいがここはひとまずエロ自販機に別れを告げて再び国道を歩いていると、ついに一軒の食堂を発見した。

 

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お父さんがひとりで切り盛りしているお店のようである。漫画「バガボンド」を読みつつ、津軽ラーメンをすする。 津軽とは青森県西部の総称だが、ここ秋田県大館市は青森との県境ということで、既に青森の空気が混ざっているようだ。

 

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国道7号線で出会った奇妙すぎる像とは?

腹が膨れたところで再び国道に出て歩いていると、奇妙な像を発見した。

 

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MAJIでKISSする5秒前の奇妙な像の隣には、さらに鳥肌モノの代物が草木に埋もれて立っていた。

 

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よく見たら首から上がない。怖すぎる。MAJIで小便ちびりそうな5秒前。

 

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隣にはなぜか上半身の男性像。腕はない。そしてなぜかWith鶴。よくわからないけどめちゃくちゃ怖い。夜に出会ったら大人でも泣いてしまうだろう。ちなみに家に帰っていろいろネットを調べてみたが彼らについての詳細はわからなかった。

 

気を取り直して再び国道を歩く。ほどなくして「陣場駅」に到着。

 

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陣場駅から奥羽本線に乗り、ようやく本日の目的地「津軽湯の沢駅」にたどり着いた。

 

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この駅で降りたのはもちろん俺ひとりだった。電車からホームに降りた瞬間、風の音と鳥の鳴き声が聞こえた。俺は木造の回廊を降りて、地上に向かった。

 

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 ■津軽湯の沢の秘湯・古遠部温泉とは?

駅周辺には観光スポットはないが、1時間ほど歩くと「古遠部温泉」という温泉宿があるようだ。周りをすこし探索しつつ、ひとまずそこに向かうことにした。

 

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駅前に人の気配はなく沢の流れる音が響く。また民家は数件確認できたが、人は住んでいるのだろうか。

 

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国道に出て温泉を目指す。車通りも少なく僅かに残る建物は廃墟と化している。

 

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40分ほど歩いただろうか。ようやく「古遠部温泉」の看板を発見した。

 

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国道から林道に入るとかつてない恐怖が待っていた。熊の気配がハンパない。この「KANEYANの秋田ぶらり旅」において数多くの熊登場スポットを歩いてきた俺だが、もはや過去最大級の恐怖である。周りは茂みで車も通らない。もはや熊を迎えに行くようなものである。

 

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こんなところを歩くのは命がいくつあっても足りない。しかも林道を進んでいくとどんどん携帯の電波が弱くなり、しまいには圏外になった。マジかよ。クマちゃん。おとなしく冬眠しててね。俺は祈るように歩いた。すこし泣いていたかもしれない。

 

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半泣きで歩いていると、ようやく建物が見えた。俺はすがるような思いで足早に建物を目指した。

 

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熊の恐怖に怯えながら、古遠部温泉にようやくたどり着いた。館内の写真撮影は原則禁止ということで掲載できないが、かけ流しの褐色のお湯に浸かり、さらにそのお湯を背中に寝転ぶ「トド寝」がこの温泉の名物のようである。この日は先客がいなく貸し切り状態だったため、さっそくその「トド寝」を実践してみると、温かなお湯に包まれて歩き疲れた俺の体の節々が回復していくような気がした。療養のため遠くから訪れる人もいるのも頷ける。十分に秘湯と形容しても差し支えない温泉宿である。

 

帰りにひとりでこの温泉を切り盛りしている若い女将さんと少しだけ話した。この携帯の電波も届かない山奥の宿にはいろんな事情を抱えた人が訪れるという。誰もいない場所にいきたい。そんな思いで俺も今日ここにいる。だけど最後にはこうして人と話して安心しているから不思議だ。

 

ちなみに今回駅からここまで歩いてきた俺だが、ガチで熊の遭遇率が高いため女将さんは車での訪問を勧めているようだ。

「お兄さん、運がよかったけど本当に危険だよ」

「もうあれは無理っす。怖すぎっす」

俺は頭をかきながら、帰りは駅までタクシーで帰ることにした。

 

そして津軽湯の沢駅に戻って秋田行きの電車を待つ間、俺は駅の待合室に置いてあった1冊のノートを手に取った。

 

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そのノートにはこの駅を訪れた人たちの素直な思いが綴られていて、そのひとりひとりにこのノートを管理している方が返事を書いていた。

もちろんその返事はその人が再訪しない限り読まれることはないのだろうが、とても温かな気持ちになった。朝に見た糠沢駅のノートとは偉い違いである。あっ、すいません。

 

ホームに上って、周りを眺めてみる。正直ここ数か月俺もいろいろあった。だけど本当はすべてどうでもいいことなのかもしれない。なんにもないこの駅を見ていたら、ふとそう思った。

 

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さて、今回は秋田を通り越して青森の秘境駅に足を踏み入れたKANEYANの秋田ぶらり旅。熊の恐怖が未だ頭から離れない俺だが、ひとまずこの秘境駅にて奥羽本線に別れを告げて、次回は冬の男鹿線の旅に出てみようか。

 

続く。

#13【町飲み】【JR奥羽本線】「鷹巣の蕎麦屋と町中華で飲ろうぜ」とは?

■昼から酒を飲みたい男の旅

なぜ秋田には日高屋がないのか。

 

東京にはあって秋田にないものは星の数だけあるが、俺が最も秋田に欲しているのは日高屋である。そう、秋田には馴染みがない日高屋だが首都圏に住んでいれば知らない人はいないであろうラーメンのチェーン店である。

 

日高屋の魅力はずばり、コスパの良さとラーメン店にも関わらず昼間からチョイ飲みができるフットワークの軽さにある。休日の昼間、日高屋で旨くも不味くもない餃子をつまみに瓶ビール。これこそが大人の嗜みというものである。

車社会な上に真面目な県民性も手伝ってか、秋田では浸透していない昼飲み文化だが、まだ明るいうちから酒を飲む解放感ったらない。守りではなく攻めの酒。そう、俺には秋田に昼飲み文化を広めていく使命があるのだ。

 

そんなわけでTOKIOの山口元メンバーに限りなく近いアルチュー予備軍の俺だが今回は旅先で昼飲みを慣行しよう思った。たまにはいいじゃない。このご時世、なかなか遠くには行けないけれど電車で少しだけ知らない街に行って、明るい時間から酒を飲む。お酒すっきー♪ お昼寝すっきー♪ 女の子は? うん、もっとすきー♪ 

俺は以前教育テレビで放送されていた「いってみよう やってみよう」の「おさるのポッケ」のようなテンションで昼飲みを堪能するべくJR奥羽本線に乗り込んだ。今回は前回の旅で訪れた二ツ井駅の隣駅「前山駅」からスタートである。

 

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 ■優しいお父さんの計らいで鷹ノ巣駅

……マジで何もない。思わず心の声が漏れてしまった。一応観光地に分類されるであろう二ツ井駅鷹ノ巣駅の間に挟まれた「前山駅」周辺は数件民家こそ確認できるが、数キロ先の鷹ノ巣駅まで行かなければ昼飲みはおろか、飲食店すらなさそうである。だが次の電車は数時間後のため、俺は徒歩で鷹ノ巣駅に向かうことにした。

 

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田んぼに囲まれたのどかな国道を歩いていると、目の前に1台の車が止まった。半信半疑のまま近づいてみると、車のサイドガラスが開いて年配のお父さんに声をかけられた。

 

「どこまで行くの?」

鷹ノ巣駅まで、なんですが……」

「じゃあ、乗って。乗せていくから」

「ほ、ほんまとですか?」

 

秋田県民のくせに思わず関西弁と九州弁が混在した謎の方言が出てしまった。可愛いチワワを連れたお父さんが鷹ノ巣駅まで乗せてくれるというのでお願いすることに。

 

「あなたは、学生さん?」

「いや、もうけっこういい歳なんです……」

 

……36歳である。

 

「あらそう、なんでここに?」

「秋田のいろんな駅や街を見て回ってまして……」

 

お父さんはすっかり学生の貧乏旅行と思い込んでいた様子である。そんな俺に助手席を奪われたチワワがお父さんの膝の上で俺をいぶかしげな目で見ている。そして見た目は貧乏旅行だが鷹ノ巣駅に着いたらさっそく酒を飲んでやろうと企てているふしだらな俺に、チワワは今にもおしっこでもかけてやろうかといきり立っている。

 

「おしっこはちょっと待ってねえ」

 

お父さんが尿意を我慢しているチワワをなだめつつ鷹ノ巣駅に到着。コロナ禍の中、見知らぬ俺を車に乗せてくれたお父さん。その節はありがとうございました。

 

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ちなみに「JR鷹ノ巣駅」は秋田内陸縦貫鉄道の「鷹巣駅」とも隣接しており、観光案内所も設置されている。

 

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まずは鷹ノ巣駅周辺を散策しながら、昼飲みスポットを探すことにした。

 

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鷹巣蕎麦屋で昼から一杯

歩いていると良い感じの蕎麦屋を発見。昼からちょいと蕎麦屋で一杯。考えただけでも、酔っぱらいそうだ。

 

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さっそく瓶ビールを注文し、ひとりで乾杯。これこそが特に趣味もない俺に唯一与えられた至福のひとときである。

 

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蕎麦屋で揚げたての天ぷらと瓶ビール。マリオはスターをゲットすると無敵状態になるが生粋の酒飲みは真昼間に天ぷらと瓶ビールを手にすると無敵状態になる。大人が働いている時間に天ぷらと瓶ビール。小学生が学校で給食を食べている時間に天ぷらと瓶ビール。もはや泣けるくらい申し訳ないけど、泣けるくらい幸せである。

 

さて、ひとり幸せを噛みしめつつ瓶ビールを飲み干したところで締めの大根おろし蕎麦を食べよう。……って、さんざん昼飲みについて熱く語っていたくせに、瓶ビール1本でフィニッシュである。言い忘れたが、俺は人一倍酒が好きなくせに、人一倍酒が弱いのである。これ以上飲んだら夜飲めなくなる。そう、生粋の酒飲みは昼から酒に手を出すが、夜もしっかり飲むのである。

 

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蕎麦を食べ終えて、街を歩いていると喫茶店を発見。酔い覚ましにコーヒーでもと入店したが、なぜか酔った勢いでチョコレートパフェを頼んでしまった。酒飲みは、時に突拍子も無いものを食べてしまうものである。

 

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昼から酒を飲んでチョコレートパフェ。もはや即入院レベルの食生活である。ここは夜の酒に向けてひとつ肝臓を休めねばならない。時間はまだ昼の14時前である。銭湯にでも浸かって夜に備えよう。

俺は酔っていることを悟られぬように観光案内所のお兄さんに近くに銭湯は無いか聞いてみた。だが残念ながら鷹巣エリアには銭湯はないようで、その代わりにバスで行ける近くの温泉を教えてもらった。

 

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館内は地元のお父さんお母さんたちで賑わっていた。この温泉は地元の社交場のようである。俺もお父さんたちに混ざって熱い温泉に入り、ロビーでお母さんたちの歓談を盗み聞きしつつ夕方過ぎ再び俺は酒場に繰り出した。

鷹巣町中華で飲ろうぜ

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鷹巣エリアには酒場が何件かあるが、今回俺が選んだのは町中華である。ちょっといい店で馬刺しも良いと思ったが、今日は気取らずに地元民が集うであろう町中華鷹巣の夜を堪能したい。

 

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まずはメニューを見てみる。肉皿と焼肉の違いって何やねんとツッコみどころはあるが、町中華の魅力はとにかく豊富なメニューである。今宵はまずビールと餃子で始めることにした。

 

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餃子をつまみつつ、ビールを飲み、そして店に置いてあったサラリーマン金太郎を読む。これが正しい町中華の過ごし方である。

さて次はレモンハイに切り替えて、焼き鳥でも頼んでみようか。

 

「すいませーん、豚バラ定食、大盛りで。あとネギマ2本、つくね2本、軟骨2本、あっ、あと青りんごサワーひとつ」

 

やばい。キャップを被ったガテン系のお兄さんとヒョウ柄のパーカーを来たお姉さんカップルに先を越された。それまでは退屈そうにテレビを眺めていたお父さんとお母さん夫婦総出で調理に取り掛かる。

しばらくはサラリーマン金太郎に没頭するしかなさそうだ。

 

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厨房のお父さんが落ち着いたところを見計らって、レモンサワーと焼き鳥を注文。やたらと塩コショウが効いた焼き鳥をレモンサワーで流し込む。だいぶ調子が出てきた。まだ少しお腹に余裕もある。次は麻婆豆腐でも食べてみようか。

 

「すいませーん。牛タンつくね2本、普通のつくね2本、軟骨唐揚げ、麻婆豆腐、あっ、あと青りんごサワーひとつ」

 

やばい。また先を越された。それにしても、あのカップル、結構食うな。

 

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またお父さんとお母さんの手が空いたところで、麻婆豆腐を注文。もちろんレモンサワーも追加だ。お母さんが目の前で業務用のデカい焼酎をドボドボとコップに注ぎ入れてくれる。

 

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麻婆豆腐の味は、ごめん、普通だ。だがそれがいいのだ。町中華の魅力はその普通さにある。

だいぶ酔いも回ってきて、腹も膨れてきた。そろそろ締めにいきたいがラーメンは少し重たい。そうだ、お茶漬けにしよう。

 

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お茶漬けの味は、完全に永谷園だ。だが追加でトッピングされた鮭や梅干しが旨い。そういえばいつもウチのおかんが作ってくれるお茶漬けはこんな感じだ。よく見るとこのお店のお母さんは俺のおかんに似ている。年齢も同じぐらいだろう。

 

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お茶漬けを平らげて帰り支度。気づくと店内には俺ひとり。ついつい長居してしまうのが俺の悪い癖だ。

 

鷹巣町中華。そこには美食家がうなる洒落た料理はないし、ぶっちゃけインスタ映えもしない。

 

だけどなぜだかそこには小さな幸せがある。

 

さて、今回は蕎麦屋町中華でほろ酔い気分のKANEYANの秋田ぶらり旅。もはやただ酒を飲んでるだけじゃねーかとツッコまれそうだが、次回はさらに奥羽本線を先に進んで、秋田と青森の県境にして秘境駅と呼ばれる「津軽湯の沢駅」を目指してみようか。

 

続く。